二年前、あずみは、たったひとりの肉親である姉を亡くした。

姉は病気で亡くなったのだけれど、その死に対して、あずみはいまだに納得できないものを持っている。

発病して亡くなるまで、わずか半年。余りに短い時間だった。

ほかに治療方法はなかったのか。治ると信じて疑わなかった姉の病状が、急激に変化して突然の別れになったこと。余りに悔しくて、やりきれなくて、亡くなってから葬儀の間も、素直に泣いて悲しむことすらできなかった。ただ目の前の処理すべき事務的なことをふわふわとした気持ちのまま行って、見事に時は過ぎた。

誰も責められない。でも納得したわけではない。誰かに納得させてほしい……。

事故で両親を早くに亡くしたあずみにとって、歳の離れた姉は姉妹でもあり親代わりでもあった。家族と呼べる人は、姉ただひとりだったのだ。姉はいつも自分の前を歩き導いてくれる人で、その存在を消すことはできないはずだった。

一体、何がいけなかったのか……。

病魔には勝てずに、姉は静かに逝った。取り乱すこともなく、すべて運命だと受け入れて。最期には、「さようなら」も「ありがとう」もなかった。恨み言すらも……。

後悔という言葉だけではとても言い表せない、ずしんと重いものを背負わされた気がした。この気持ちは、お義兄さんだってきっと分かってくれるはずだ。

あずみは改めて問い(ただ)したことはなかったが、この二年の間、義兄の本心を知りたいと思いながらも結局お互いが触れずにここまできてしまった。

「ということなので、明日は真琴の家に寄って、当日電話を受けたお母さんからどんな状況だったのかを聞いてくる。お悔やみにも行ってないし……」

「あまり、よその家庭のことに迂闊に首を突っ込むんじゃないぞ」

「うん?」

「厳しい言い方だが、そのうち熱も冷めて現実を受け入れなきゃならない日がくる」

いつになく真顔であずみに向き直った。刑事としての忠告に聞こえた。

「お義兄さんには心配かけません。警察手帳がない身でできることは限られているもの」

あずみの中でも、それほど深い考えがあっての発言ではなかった。素人探偵気取りで何ができるか。本当にそうだ。

だが、その素人探偵が事件を思わぬ方向に導いてくれることもあるのだということに、当の本人すら気付いていなかった。