第二章「天の神様と土の神様」  ゆう

春の訪れを教えてくれるのは、丸みを帯びて優しく手に絡みついてくる水の柔らかさ。私は、小川のほとりにしゃがんで、春を楽しんでいた。私は、目が見えない。白杖とサングラスが私のトレードマークだ。

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それはかつて私が、盲学校高等部のときだった。学校の体験プログラムで、陶芸教室があった。そのとき、私は「これだ!」と思った。ひんやりとした土をそっと両手で包み込む瞬間。土の温度と私の体温が重なり合い、徐々に一体となる。ろくろ台の上の土は、私の手の動きに合わせて、まるでダンスをしているように、その形を変えていく。私は、すっかり陶芸のとりことなった。

休日は、学校に講師として来てくださった陶芸教室の泉先生の元に通っている。実は、体験プログラム終了後に、「どうしても、陶芸がしたいんです」と無理やりお願いして塾生にしてもらった。先生はとても困ったはずだ。目の見えない私が来るとなると、工房内の段差をなくしたり、工房内の導線を変えたりしなくてはいけなかったはずだ。

だけど、私が塾生として「アトリエ」を訪ねたときには、それらすべての環境が整っていた。

由紀(ゆき)さんのお陰で、他の塾生も『使いやすくなって良かった』って言ってくれたよ。盲学校の先生たちにも感謝だね。工房内のレイアウトや盲学校で使っている支援ツールを無償で入れてくれて、本当に助かったよ。ありがとう」

アトリエの先生の声は、笑っていた。

「私の方こそ、何から何まで、ありがとうございます」

声のする方へ体を向け、深々と頭を下げて感謝の気持ちを伝えた。

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