私たちの春
五月になって、中間試験が行われる頃になった。私は入試では受験科目として化学、数学、英語を選択しようと思っている。だから中間試験の勉強も、その三科目を重点に勉強するようにしている。そんなある日の昼休みも、いつもの三人で、クラスルームでお弁当を食べていた。
「もうすぐ中間試験があるけど、勉強している?」
私は、二人に尋ねた。
「うん。なるべく学校の授業で、修得できるように努力しているけど、家でもそれなりに勉強している」
リエは答えた。
「英単語を覚えたり、私の場合、日本史も色々と暗記しないといけないことが多くてホント大変」
ユミは言った。
「勉強って、確かに大変だけれど、私たち、勉強だけに集中できる環境があって恵まれているよね」
私は言った。
「どういうこと?」
「世の中には、勉強したくても、それができない環境の人が大勢いるのよ。世界には、十歳で強制結婚させられる少女もいるのよ。それも生活のために。ほとんど人身売買みたいなものよね」
私は答えた。
「ああ、貧しい国では、そういうことがあるらしいわね」
「私たち日本の国に生まれて、両親がいて、私立の高校に通っていて、それが普通だと思って暮らしているけれど、本当は、かなり恵まれた環境にいる人間なんだと思う」
私は考えを述べた。
「そうよね。生活にも不自由していないし、学校にも通って、こうして友だちと一緒にお昼休みを過ごすことができる。確かに、私たちは恵まれていると思う」
リエが同調した。
「今の時代、日本は戦争もないし、平和で穏やかで安定している」
ユミが言った。
「今の時代の日本に暮らせている。そのことだけで充分幸せだと思う」
リエも言った。
「日本人は、道にゴミを捨てないし、電車に乗る時は整列する。落としものは、たいていの場合、落とし主の元に戻るし、礼儀正しいし。それにモノの物価は安定している。百円ショップへ行けば、こんなステキなものが百円で買えるのと思うようなモノまで売っている。コンビニは品ぞろえ豊富で、二十四時間三百六十五日あいている。電車は時刻通りに運行しているし、たいていの人が時間は、きちんと守る。宅配も充実していて、外出しなくても、ほとんどのモノが家まで届く。インフラに不備が生じれば、すぐに対応してくれる」
私は日本の国の良さを語った。
「本当にそうだわ。日本て実に良い国だわ」
ユミは同調した。