絵画教室

「そうよね。絵を描くことは、特別な人を除いて主に趣味よね。でも、いい趣味だとは思わない? 家で一人だけで、スケッチブックと画材だけあれば、いつでもできるものね」

「一人だけでもできるけど、こうして仲間で集まって描いていると、なおさら一層楽しい」

「私は学生生活の中で部活が一番楽しいわ」

「そうよね。クラスの人とおしゃべりも楽しいけど、美術部でおしゃべりタイムが一番いいわね」

「僕は今三年生で、一学期をもって部活は引退するよ」

「私もそうよ。なんだか寂しいな」

「私たちの青春時代は、部活と共にあったようなものだものね」

「だけど受験勉強しなくちゃね」

「三年間なんて、あっという間だな」

「先輩たち、引退はするけれど、秋の文化祭には作品を出展するんですよ。それに向かって、最後の作品制作がまだ残ってますよ」

「そうだな。部活に参加するのは、あと数回だけど、僕たちの作品も、秋の文化祭に出展されるんだよな」

「私は、今制作中のものでなくて、この間描き上がった、静物画を出展しようと思っているの」

「ああ、あれね。私も、あの作品は好きよ。よく描けていると思う」

「でしょ? 私が今まで描いてきた中で、あの静物画が一番上出来だと思ってる」

「僕は、今描いている抽象画を出展するつもりでいるよ。面と色彩の持つ鮮やかさを力強く表現していて、自分で気に入っているんだ」

「中間テストがあったり、期末テストがあったり。それに夏休みもあるでしょ。たちまちのうちに秋の文化祭になるわね」

「うちの高校は、文化祭と体育祭は毎年秋に交互に行われるでしょ」

「そうだね。だから僕たち二年生にとっては、今度の文化祭が高校生活で一度切りのものとなるんだよね」「今まで描いた中から、これが一番と思える作品を、よく吟味して出展したいな」

「ゆきちゃんと陽平は、今描いているものを出展するんでしょ?」部長が質問した。

「ええ。デッサン用石膏像を仕上げるのは時間がかかるので、その一作しか描けないと思います」私は答えた。

「僕は、できたらもう一作品描いて、二作品を比べて、よく描けた方を出品したいなと思っています」陽平が答えた。

「二人とも一年生だけど、絵がとても上手だから、美術部の出展コーナーも華やぐと思うわ」