私たちの春
「食事の準備ができました。お父さん、お母さん、いただきましょう」
「それではいただきます」
三人は両手を合わせて食事の挨拶をしてから食べ始めた。
「とり肉が、とても柔らかくて、おいしいね」
「とり肉から良いダシが出るから、ゴボウもニンジンもレンコンも味わい深いよ」父が褒めてくれた。
「やはり和食は、良いわねえ」
「胃が休まる」
「こうやって、家族三人で食事をしている時が、父さん一番幸せだ」
「京子ちゃんは、東京栄養大学を受験するんでしょ?」
母が尋ねた。
「そうよ。あそこの大学が、管理栄養士国家試験の合格率が一番高いの」
「そして将来は、料理の先生になりたいのよね?」
「うん。お母さんと同じ、ジョイフルクッキング教室の会社に入って、料理の先生になりたい」
「それには、やはり管理栄養士の資格を持っていた方がいいわね」
「うん。就職に有利になるし。同じ料理をするのでも栄養についての知識がある方が、料理をしていても楽しいと思う」
「京子が、しっかりしているから、父さんは安心だ」
「炊き込みご飯、まだあるから、良かったらおかわりしてね」
「そうか。それじゃ、父さん、おかわりさせてもらうよ」
私たちは夕食で家族団欒を楽しんだ。夕食が済んでから、私は食器をキッチンのシンクに運んで、食器を洗い始めた。
「京子ちゃん、お母さんも手伝いましょうか?」
「いい。お母さん、一日中立ち仕事で疲れているでしょ? ゆっくり座っていて」
「ありがとう。京子ちゃんは、本当に優しい子ね」
私は食器を洗い終えると、それらを拭いて食器棚にしまった。それからグラスに麦茶を注いで、テーブルに運んだ。
「はい、お茶」
「ありがとう」
「京子ちゃんには、いつも、上げ膳に据え膳で、お母さんたち幸せよ」
「本当に良い子どもに育ってくれて、父さんは嬉しいよ」
「お母さんとお父さんは、高校時代からの友だち同士でしょ。その年齢に京子ちゃんも成長して。お母さん、感慨深いものがあるわ」
「京子は、男の友だちはいないのか?」
「いない、いない。私は、いつも、リエとユミの三人でいるのよ」
「そうか。三人仲が良いんだな」
「今日も三人で話していたんだけど、私たち三人、姉妹みたいねって、言ってたの」
「ふうん。親友以上の仲っていうわけだな」
「そうよ。私たち、高校を卒業して進路が別々になっても、ずっと仲良くしていこうねって、今日も確認し合ったの」
「京子に、そんなに仲の良い親友がいて、父さん、安心するよ」