「お父さんたちは、高校時代から、ずっと友人同士だったんでしょ? いつ頃から、お互いを異性として意識するようになっていったの?」
「父さんも母さんも奥手なんだよ」
「だけど、あれは、お母さんたちが二十六歳になった年よ。お父さんが会社で仕事上のミスをして、とても落ち込んだことがあったの。その時、お母さんが親身になって、お父さんの相談相手になったの。それからお母さんたちの心の距離が縮まって、お互いに、お互いを意識するようになったの」
「そして、やがて恋人になって、三十歳で結婚したというわけね?」
「京子は、理解が早いな」
「ふうん。そして私が生まれたっていうわけか」
「だから、父さんたちは、京子が高校三年生になった今が、心に深く感じるものがあるんだよ」
「お母さんたちは、京子ちゃんより三十一歳年上だけれど、人生で成長しているという点においては、お母さんたちも、京子ちゃんと同じ成長過程にいるのよ」
「人間というものは、いくつになっても、これで完成ということがなくて、一生勉強して成長していくものなんだよ」
「うん、わかった。一生何かを学びながら、日々成長しているのが人間なのね」
「そうだよ。だから父さんたちは、いつも話しているんだ。京子と一緒に父さんたちも成長しているねって」
私は、その時、両親のことを大人だと思っていたけれど、両親もまた私と同様に毎日学びの人生を送っているのだなということに気づいた。
お茶を飲み終えると、私は自分の部屋へ行って、翌日の用意を始めた。カバンの中の教科書とノートを入れ替える。制服のブラウスにアイロンをかける。ハンカチ、ティッシュ、お財布などの確認をする。それから、シャワーを浴びて顔を保湿して、歯磨きをした。そして一時間ほど勉強してから、十時半に就寝した。