第1部 政子狂乱録
二 新鉢を割る
この時、夫が政子に要求したのは[巴どり]という刺激的な型で、その名の由来は巴の紋の絵柄からとったのであろう。
「ばかな婿、いい塩梅となめている」の句があるように、男が女の女陰を舌や唇で愛撫することで現代ではクンニリングスという。女が男性器を舐めたり吸ったりするのを「尺八」または「フェラチオ」という。
この益体もない格好でも夫婦間で行われるならば少しも恥ずかしいことはないので、本番に入る前、勇気を出して試みれば二人の愛情を一層こまやかにすること請け合いである。夫婦の契りを交わしたばかりの頼朝と政子にはぴったりの情景ではないか。
愛液に塗れ漆黒に輝いて密林からそびえ立った頼朝の雄姿が目の前に迫っている。初めての交合の際は恥辱心もあって、夫となる頼朝の一物はまだ十分確かめることもできなかったが、先ほど、女にさせられたばかりで今は心にも十分なゆとりが生じている。
その先端は左右に張り出し、微かに開いた中央の鈴口には透明な樹液が漏れており、くびれた裏側は幾筋もの充血した血管が今にも破裂しそうに這いまわっていて、像の本体はあくまで赤黒く政子に向かって敢然と反り返っている。そのお姿はまるで巨大な松茸に似ており、政子の崇拝を今かと待ち構える憤怒の仁王様であった。
(あぁ……これこそ私を大切に守ってくれるご神体だわ、大事に、大切にして差し上げねば……)
政子はそれの先端をそうっと口に含んでみた。鈴口から洩れてくる白磁色の液体は、何だか栗の実の匂いがして、あんまり味はよろしくない。
「政子どの、どうしたのかな、それでは私の一物は満足しませんよ。ほら、舌を使って舐めてごらん……そうそう、今度はカリの裏側に舌を入れて舐めまわすのですよ」
政子の身体には再び炎が燃えてきた。
(初夜の旦那様から、こんなことまで要求されるとは考えもしていなかったが、でも、こうして夫婦というものは心も身体も一つになるのかしら)
男の一物は更に逞しく、ドクドクと脈を打ち出した。
「いいよ、いいよ、その調子ですよ、政子、今度は手を使わずにお前の口だけで私の竿を上下しておくれでないか、全体を捻りまわす様にして歯を立てずに根元まで呑み込み、しっかりと舐りまわして下さいね」
政子の全身からも、芳香を放ちながら汗と花蜜があふれ出していた。男は先ほど来、思い切り開かれた女門に顔をうずめて舌で奉仕を続けている。蜜汁に覆われたその花唇は大きく膨れて包皮から覗いた愛の突起は桃色に息づいていた。男は左右の花弁をかわるがわる舐りながら、時には舌先で蕾をツンツンと小鳥のようについばんだ。そうされると、蜜壺からは桃の香の愛液がとめどもなく溢れてくる。
「アアツ、そ、そこ、ああーん、また気がいってしまいそうです。もう一度一緒になってエ~はやく、はやく」
二度目だから、もはやこれまでと我慢の限界を感じた二人は、お互いの顔を愛液でベトベトにしながら、息も絶え絶えに体を入れ替えた。女の満足しきった言葉と悶え苦しむ淫らな姿に、男はまたしっかり女を抱きしめ、何度も精を注いでもう一度激しく腰を使うと二人は目出度く白目を剥いて昇天を果たしてしまった。