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僕らは、「奇跡」を信じた。きっと先輩は、生きている──と。

異常気象の原因とされる「ラニーニャ現象」が発生していると、ニュースで言っていた。こう毎年のように異常気象が起こるのであれば、もはや、例年通りとでも言えるのではないか。と思ってしまう十一月。季節は冬の訪れを告げていた。

僕は、先輩から預かっている星砂に祈りを込めた。

「先輩が、また笑顔で戻ってきますように──」いつもそうしている。

和人先輩は、あの日一緒に見た流れ星に、何を願ったのだろう。聞いておけばよかった。とふと思った。

その日もいつも通り、僕は部活を終えて帰宅した。宅配ボックスを開ける。すると、一通の手紙がそこにあった。「春野(ほまれ)様」僕宛だ。

手紙を出してくる人なんて、一人一台は携帯電話を持っている今の世の中で、とても珍しい。第一、僕にとって、これが人生で初めて届いた手紙だった。送り主を見ると、「Kazuto Miyagi」と書いてある。まさか! と思い、急いで封筒の封を切る。封筒には、一枚の写真と手紙が入っていた。写真には、笑顔でピースサインしている和人先輩と病室のベッドで鼻にチューブをつけている女性が笑顔で写っていた。

「もしかして……」僕は、切手の消印を見る。

「Taipei」って、台湾から!

この手紙は、台湾から送られてきたものだった。そして、和人先輩の横で幸せな笑顔を見せる女性は、きっと「本当の親」なのだろう。

【前回の記事を読む】【小説】「それが、僕が見た先輩の最後の笑顔だった。」