第一話 カミーノを歩く人たち

キリスト教の三大聖地をご存じだろうか。スペイン北部のサンティアゴ・デ・コンポステーラ、カトリックの総本山のバチカン市国、そして、ユダヤ教、イスラム教の聖地でもあるイスラエルのエルサレム。その中のサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を歩いた。

フランス各地からピレネー山脈を越えて全長約5000キロメートル、一般的に歩く人の多い道でも800キロメートルの巡礼路だ。私はその中のサリアからのおよそ100キロメートルに挑戦した。キリスト教徒ではないが、何かを見つけられるかもしれない。

2014年12月4日

冬なので夏のような賑わいはない。半分閉まっているようなアルベルゲが並んでいる通りを上がっていく。

アルベルゲとはカミーノを歩く巡礼たちが泊まるドミトリーのような安い宿だ。カミーノとは巡礼路のこと。私はこれから110キロメートルのカミーノを歩き、サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す。

まだ薄暗い霧の中、6時30分ごろサリアの町を出発した。この日はポルトマリンまで21.6キロメートルを歩く予定。途中二人連れの巡礼者がいたが、何かを探している様子で立ち止まっているので追い抜いていく。二人ともものすごく大きな荷物を持っている。

霧の中で道はほんの少し先までしか見えない。坂の上に上がってもどの方向に進んでよいのか全くわからない。ちょうど犬の散歩をしている人がいたので聞いたが、少し下がって橋を渡って進むらしい。

言われたように下がっていくと確かに橋はあったが、その途中から霧がかかっていて先に道があるのか、どこかの家に入ってしまうのかもわからない。もう少し広い道を下がってみるが次の橋は見えてこない。また、通りかかった人に聞くとやはり先ほどの橋を渡っていくのだ、と言う。

最初から迷ってしまった。霧の晴れない中を進む。しばらく山道を進むとまた分かれ道だ。そのとき、後ろから坂道で抜いた二人組がやって来た。そして道の見分け方を教えてくれた。