分かれ道には必ず道しるべがあり、黄色い矢印が付いている。だからその方向へ行くこと。また時々あと何十キロメートルだということも書いてある。それを見ていけば迷わないと。初歩の初歩を教えてもらった。

巡礼者はクレデンシャルというスタンプ帳のようなものを持っている。私は公式のところではなく、前日に泊まったホテルで買ったので、あまり説明はしてもらえなかった。

前日も午後2時に着いたのにシエスタのためホテルの従業員が来たのは、なんと5時だった。予約サイトには日中はずっとフロントオープンと書いてあったのに。チェックインは2時からだったのに。隣の店の人が親切に電話してくれたのに。そんなこともあり、こちらからもあまり聞く気になれなかった。

その先しばらくは山道、登りだったのでかなりきつかった。このときずっとこんな道なのかと心配したが1時間もすると平坦な道に変わった。昼近くなるとどんより垂れこめていた雲が少しずつ晴れていき薄い青空が見えてきた。日差しが出ると景色も一段ときれいに見える。石を積んだ家が並ぶ中世のような村を抜けたり、曲がりくねった道を登り小高い丘に着いたり、変化があって飽きない。丘から振り返って見た景色も見とれるばかりだ。

昼はいつも道沿いにあるバルでサンドイッチを食べた。フランスパンにハムやチーズ、卵などを挟んだ簡単なものだ。それにコーヒー。寒いので温かいものが欲しくなる。でも歩いていたので暑くなり、時々はビールも飲んだかも。冬だったのでバルもほとんど閉まっており、店に入るとさっき抜かれた人だという風に同じ人に何度か会うことになる。

川の向こうに街が見えてきた。きっとあれがこの日の目的地のポルトマリンだ。街の中心地に広場と教会がある。そこでホテルに電話した。予約サイトでその町から15キロメートルくらい離れたホテルを予約してあったので、電話して迎えを頼んだ。愛想よくすぐ行くと言ってくれた。

若い夫婦がやっているホテルだった。石造りの広い部屋、暖炉のあるロビー、レストラン棟はまた別にある。ロビーにはなぜか大きなラッパの付いたビクター製のレコードプレーヤーがあった。別世界に迷い込んだような素敵なホテルだった。

夕食は優雅にワインとコースメニューを食べることができた。暖かい部屋でふかふかのベッドだったが、初日で興奮していたのかなかなか寝付けず、また眠っても何度も目が覚めてしまい、よく眠ることができなかった。

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