国公立大学と私立大学のひとつの大きな違いは、授業料の差です。国立大学のほとんどが入学金は28万2千円、授業料は年間53万5800円と定められています(2021年現在)。公立大学は入学金や授業料がその地域住民かどうかで多少異なってきますが、おおむね国立大学の同じ程度になります。

他方、私立大学の学費は大学によってかなり異なります。最も学費の安い大学と、最も高い大学では在学期間中で2877万円も異なるとされています。いずれにせよ国公立大学に比べて、何10倍も高いと考えておく必要があります。

一般に医師一人を育てていくのに、約2千万円程度の費用がかかるといわれています。この費用については、種々の議論があります。ネット情報では1億円かかる、とする意見が出ていて、話題になっていました。大学に配置されている教員が、すべて医学部学生の教育に専念するとなると、この程度の費用になるのかもしれません。

実際には教員の多くが、大学病院での診療や、自分あるいは教室のための研究など、さまざまな業務に担当しています。また医学教育に対して、国などから支援も受けています。

いずれにせよ、授業料の大きな差がある点では、国公立大学の医学に入学することは、魅力があります。もちろんその入学はかなり難関であり、相当な成績でないと入学できません。他方私立大学医学部では、一般に学費と入学の難易度は、反比例の関係があるようです。すなわち学費の比較的安い大学ほど、競争が激しく、入学も難しくなっています。

他方、大学の教員の学生教育に対する力の入れ方は、国公立大学と私立でかなり異なっているようです。一般に私立大学医学部では、少々成績の悪い学生であってもしっかり教育して、医師国家試験合格まで育てていく必要があります。国家試験の合格率が、その大学の評価の指標となるからでしょう。その点で教育には、ひときわ力を注いでいるようです。

もちろん国公立大学医学部でも、教育には力を入れています。でもどちらかというと、教室の研究や診療などに精力を注ぐ傾向が強い、と言えるかもしれません。東京大や京都大など、入学時の偏差値の高い大学が、必ずしも国家試験の合格率が高いとは言えません。これは学生の学力よりは、入学後の学生教育に左右されているのでしょう。特に私立大学では、国家試験対策に十分エネルギーと時間をかけているようです。