「――人間はのう。自分は自分だと思い込んでおるようじゃが、実際は違うのじゃ。自分の意識が百パーセントだとすると、本当の自分はせいぜい十パーセントしかない。残りの九十パーセント以上は、()き物に支配されておる。

ほれ、よく言うではないか、『魔が差した』とか……。あれじゃ。

お前も自分であって、自分ではないのだ。お前の体を支配しているのも九十パーセント以上が憑き物だ。

それで、憑き物には大きく分けて二種類あるのじゃ。

一つ目が、その人間の歴史・生き方、つまり、先祖じゃ。

二つ目が、その人間の心のあり方、つまり、先祖がしてきた信仰じゃ。

そして、信仰には四つの傾向がある。

一つ目が神様系じゃ。神社とかの神道、キリスト教なんかじゃ。

二つ目が行者系じゃ。山伏とかの修験道の類じゃな。

三つ目が稲荷系じゃ。お稲荷様とかの狐じゃのう。

四つ目が龍神系じゃ。弁天様とかの龍とか、蛇とか、水神なんかじゃ。

これが、その人間の背後でコロコロと入れ替わっていくのじゃ。

だから、同じ人間でも気分とかが一定ではなかろう。いくらがん張っても心は変化してしまうのじゃ。コロコロとな。だから、『こ・ころ』というのじゃ。

ふぉふぉふぉ……」