女の操を奪った以上は、男は女に責任が生じるのは当然で、ほかの女に目を向けることなどあってはならないと考える。(この自慢の一物は、大勢の娘御や後家どのに味わってもらい、大いに悦んでもらうのも私の大切なお役目であるぞ、女の扱いは最初こそ肝心、肝心……)頼朝は政子に対して、この後もう一押しが大切だと思った。
ひと汗かいたところで、男は女の耳朶に軽く歯をあて、
「政子どの、初めての体験はどうでしたか。十分に堪能されご満足された様子ですが、私も貴女に悦んでいただいてこんな嬉しいことはありません。でも私はまだ気をやっていませんから、今度は貴女が私を悦ばせる番ですよ」
そんなことを云われてもせんない話、今初めて新開の儀式を授けられたばかりだから、政子はどうすればよいのやら皆目見当がつかない。例の枕草子には、女が男の一物を口に含んで舐ったり、手で上下に擦ってみたりして奉仕する姿が絵図入りで示されていた。そんなことは夫婦なら当たり前の行為だと教えられても、いざ男からその実践を迫られたなら自信はない。
「政子どの、何も心配することはありません、恥ずかしいと思わないで私の言うとおりにすればよいのですヨ。今度はとりあえず[巴どり]でお願いしてみましょうか」
男は書棚から、おもむろに女の表情を窺うようにして男女の性的場面を満載した極彩色の春画を取り出した。そこには政子がこれまで見たこともない顔を赤らめるような男女の驚愕の風景が描かれていて、なかでも「穴目具利双六」(国際日本文化研究センター所蔵)と銘うった極彩色の絵図などは、様々な表情の美男美女の戯れの図が色鮮やかな筆遣いで双六風に描かれていて政子を興奮させた。
「政子殿、夫婦の戯れの中にはこんなに面白い楽しみ方もあるのですよ、貴女も私と一緒に勉強をしてみようではありませんか」
まだ政子の火照りが残っているうちにと、男は思い切って、体位を入れ替え女の上に逆さの姿勢で覆いかぶさってみた。