広い雲海の海で魚船を進める中、ラムカは初めて船に乗ったので、珍しい風景にワクワクしていた。ラムカの育った島と大きさがあまり変わらない島々が点々と雲海に浮かんでいたが、ラムカの島のように、カボチャの家で暮らす人々の島を見る事はなかった。
そもそもあれほど大きな野菜がある島は他になかった。
島々はそれぞれ個性があり、岩で出来た島、砂の島、植物で出来た島、中でもラムカが驚いたのは、巨大な魚の上に家々や森がある魚の島だっだ。未だ自分が知らない事が山ほどあり、知らない世界を旅出来るのは楽しかった。
島々では、額に0の刻印を持つ零族が何人か居て、それぞれ主人を持って働いている姿を見た。しかし、中には動物の記憶を持っているが額に0の刻印がない者がいた。彼らは記憶人や記憶持ちと呼ばれ、主人を持たず、全ての行動が自由に出来ているようだった。
カイゼルは、雲海で漁をしていたサルの記憶人と話し事情を聞いた。彼の話によると、サルの記憶の種を闇市で買ったようだった。カイゼルはそれを聞き、ある海賊が記憶を売買している噂を思い出したが、何故自分がその事を知っているのか分からなかった。
サルの記憶人は、辺りを見回しながら小さな声で言った。
「最近では、全く自由と言う訳にいかないんだ。零族狩りの奴らが、さらって行ったなんて話も聞くからな……。この先に零族狩りの長、ラ・エンカの縄張りがある。奴には気を付けな!」
「親切にありがとう! ところで何で、あんたはサルの記憶を入れたんだい?」
トラゴスは好奇心から聞くと、サルの記憶人は、急に心を閉ざし黙って去って行った。カイゼルは余計な事しやがってと言わんばかりの顔でトラゴスを見た。
トラゴスは何がいけないのか分からず、フランゴを見たがフランゴは目を合わさず甲板から去った。