第一章 結論(日米関係と今後の中国)
日米関係
米国は、ヨーロッパ諸国や中国のようにユーラシア大陸にある国家とは違って、国土に万里の長城(防壁や柵)をめぐらせるという歴史を持たなかった。もちろん今日では、メキシコなどからの移民に対して築いてはいるのだが。
その理由は、太平洋と大西洋という広大な海によって、ユーラシア大陸やアフリカ大陸から大きく隔てられていたからである。だから米国は大陸国家ではなく、日本と同じように海洋国家(島国)なのだ。
米国は、古代の中華王朝にとって脅威となっていた遊牧民族や韃靼(モンゴル人)及び東ローマ帝国時代のゲルマン人などと、陸を通じて国境を接していなかった。そのために、日本以上に他国から自国領土を侵略された経験がほとんどない。
兵器体系が格段に進歩した今日でも、他国を占領するためには、陸軍の地上部隊が相手国の領土に足を踏み入れる以外に方法はないといえる。ミサイル攻撃や航空爆撃及び艦砲射撃だけでは相手の国を占領したとはいえない。
陸軍部隊が相手国に踏み込んで初めて占領したということになる。海という自然の防壁は「元寇」(モンゴル帝国の日本侵攻)をも撃退したのだ。もちろん鎌倉武士の武功もあったのだが。
太平洋と大西洋によって守られてきた米国は、他国との外交に当たって本土防衛を全く考えないで商業(経済面)一本やりで交渉することができた。敗戦後、国防を米国に任せっきりにしたわが日本と同じように。
しかも奴隷制の上に成り立った国であったので、長期間にわたって特権階級(人種差別)による政治体制をとってきた。奴隷解放が徐々に進んできて、ようやく民主化がなされた国なのである。日本人はこのことをよく知っておく必要がある。