四.電気伝導度
大河と出丸、川原は、ニシベツ実業高校に戻ると早速、水産クラブ執行部のミーティングをした。使える電気伝導度計は三台だ。図面をもとにして、七カ所の調査ポイントを決めていく。
図面をにらみながら、川原が提案する。
「橋の上からのサンプリングがいいな」
「そうすると、流れの中心から水が取れる」
大河は、必要な機材を考える。
「そうするとバケツとロープがいるな。酪農科三年の内燃の店に頼むか」
出丸はチーム全体の動きをイメージする。
「バケツとロープ、それに電気伝導度計をセットにして、三セットか。三チーム組んで一チーム二、三カ所測定すればいいんじゃないか」と出丸。
「三・四年に呼びかけて、明日にはチームを編成して、早速調査だ」
大河は早速、水産科の三・四年生に、一斉メールで呼びかけた。
次の日の放課後、大河の呼びかけに十数名が集まった。大河は手早く三チームに分けると、出丸が調査ポイントと測定法を説明した。川原は、測定セットを各チームに手渡した。
「頼んだぞ。俺たちの未来が懸かっている」との大河の声を合図に、各チームはバイクでそれぞれ調査ポイントへ散っていった。
それぞれのチームは、調査ポイントに到着すると、橋の上から川の流心に向かってロープ付きのバケツを放り込んだ。ロープを手繰り寄せると、バケツいっぱいに川の水が入って上がってきた。そこに素早く電気伝導度計の電極を投げ入れる。メーターの数値を調査ポイントごとに記録していった。
最後のチームがニシベツ実業高校に戻ってきたのは、午後六時を過ぎていた。最も遠い、ニシベツ川源流部を任されたチームである。大河はデータを受け取ると、調査チームにねぎらいの言葉をかけ、帰途につかせた。