【前回の記事を読む】岐阜から奈良井千軒へ…絶好の旅日和、ローカル線で行く一人旅!

第一章 旅

奈良井に遊んで

F食堂でまた蕎麦を食べた。

おばあさんが奈良井のミニ歴史と現在を語ってくれた。村が高齢化していること、観光客は日によって大変な一日になること、江戸日本橋から尋ね歩いてくる人がいること、ここで誇りを持って住んでいること等。そして私が岐阜県からやってきたことを話すと、奈良井と岐阜の高山では苗字がよく似ていること、先祖が高山と往来があったことなどを訥々と語ってくれた。

明治、大正、昭和、平成、そして現在までこういう歩みを辿っている。人の生き様が今このようにしてこの地にしっかりと根付き、誇らしげに根付いていた。こういう山合いの地でも島の人でも人々は土地と周囲に愛情と誇りを持ち、その隣人や故郷を他人に語るのだ。それは立派な生き方なのだ。

地図を見て二百地蔵を見るために北へ向かってから西へ向かうこととした。

ここは明治時代に鉄道の敷設と共にあちこちにあった地蔵を集めた場所であった。一体ならばそうでもないのだが、こうして集合体になると不思議な霊感と冷気が感じられ、生命力が薄暗い丘に宿ったかのように、ひんやりとした風を送って来た。肩には何か生命体が乗り移っているかのようであった。

思わず八幡宮の階段を後ろを見ないで急いで降りていった在りし少年時代に肝試しに夜中にお墓に行き、いつまで我慢できるか、一人が逃げ出したら一斉に逃げ帰ったことを思い出した。