冷えとは何か

冷えと、()(けつ)と、捻れは、相互に関係しながら、病気の原因となっていくものですが、それを個別に分析してみます。冷えを常に感じている状態つまり「冷え性」は、寒がりとはちがい、冷えの悪影響を受けた体調不良状態の総称として使われます。

例えば、冷たい氷を体表に押しつけたとします。氷は体温で溶けて水になります。その水が蒸発する際に気化熱が奪われ、その部位は、他の部位と比較して冷えます。しかし、暫くすると、血流に乗って栄養分や酸素とともに、熱エネルギーが運ばれて来る結果、低下した体表温度が元通りに回復して、冷えがなくなります。しかし何らかの事情で血流が滞った状態が続くと、冷えの影響を受けた組織や器官に、体温低下による機能低下状態がおこります。

これが、冷えという症状なのです。つまり、冷えとは血流が滞った状態ともいえます。

冷えは、相対的な概念でもあります。東洋医学には「上熱下(じょうねつか)(れい)」という言葉があります。これは、文字通り上半身に熱エネルギーが停滞して、下半身にまで熱エネルギーが行き渡らなくなっている状態のことです。のぼせ、肩こり、ヒステリー、鼻血などは、この状態であると考えられます。

人体のマクロ的分類としては、上下の他に、左右や前後や表裏や内外の差違があります。内外の温度差からくる冷えの例として、夏の暑い時期に冷たい飲食ばかりを続けていると起こる下痢が挙げられます。体の深部の冷えを早く体外に排出しようとする人体の防衛本能の結果だと考えられます。慌てて直ぐに下痢止めを服用しない事が大切です。

体の左右の温度差からくる冷えの例として、左右どちらかの筋肉運動ばかりをしたことによる筋肉疲労が挙げられます。使いすぎた筋肉には疲労物質が溜まり、筋硬縮がおきる一方で、使用頻度の少ない筋肉には退行性の筋萎縮がおきる結果、左右対称部位の筋肉に電位差が増大し、腰痛や靱帯異常が発生します。

スポーツマンにしばしばおきる筋・筋膜腰痛は、特定の筋肉の酷使による、筋肉の冷えが原因である場合が多くあります。

西洋医学的に見た冷えとは、組織や器官の毛細血管の、血流異常と考えられます。元々毛細血管の先端部分には「吻合(ふんごう)」と呼ばれる、一種のバイパス機構が備わっています。

皮膚表面に傷ができ、出血している場合に、切断した血管から出血が続かないように、毛細動脈から毛細静脈へと吻合(ふんごう)を経由して、還流して大事にならないようにします。この吻合(ふんごう)は出血時にのみ作用するばかりではありません。外気温が低い場合に、血流をショートカットする事で体温放出を抑えて冷えないようにするのにも役立ちます。甲状腺ホルモンや、副腎髄質ホルモンが機能する場面です。

吻合(ふんごう)が機能しないと、自律神経失調やホルモン失調等が原因で、手足の末端で冷えが生じます。