碧衣の唯一の息抜きといえることは、近所に住むまだ幼い子どもたちとほんのいっときの間、遊んでいるとき。
自分の弟や妹と、その姿が重なっていたのかもしれません。幼子たちの笑顔にしばし癒され、元気のモトをもらっていたようです。緊張することなく、素の自分でいられることができていたのかもしれませんね。
自分らしくあること、とっても大事なことだと思います。本当の自分が思っていることについて、あなたはいつも向き合うことをされていらっしゃいますか。もしも無視してしまいがちなようでしたら、ぜひ、本当の自分とおしゃべりする時間をもってみることをおすすめします。そのときには、どんなことを感じているのか、素直に正直にみつめてあげてくださいね。
碧衣が奉公先での生活にも仕事にも慣れた頃、数年の月日が流れていました。商いの方もいつしか手伝うことができるようになると、お客さんとの関わりも楽しく思えるほどに変化していました。
実家へ帰ることは年に数回、わずかな時間でしたが、家族の笑顔を目にすることが本当に心休まる時間であったことでしょう。あるとき、父親が体調をくずしたことがきっかけで床に伏せがちとなり、母親への負担がそれまで以上にのしかかることとなりました。
碧衣は決心します。
これ以上お母さんが無理をしたら、お母さんも倒れてしまうかもしれない。なんとかしなくちゃ……。弟や妹はまだまだ食べ盛り。ひもじい思いをさせるわけにはいかない。もっとお金を稼げる方法はないものか。わたしになにができるだろう。そんな想いを巡らせながら、仕事に精を出す日々がしばらく続きました。