第三楽章 ときを超えて
Ⅱ 日本に生まれて
“正直になろうよ ”
あまりにも単純なコトバが降ってきて、アヤはしばしの間、あっけにとられていました。頭のなかで聞こえた声は、誰の声だったのでしょう。正直になる。素直になる。
これって、意外と難しいことではないかと思うのは、私だけかな。自分の本音を偽ったり、あるいは無視するパターンは多々あることのように思います。誰かに合わせたり、無意識になにかを守るために、つい本音を隠してしまうこと、ありませんか?
少なくとも私自身は、大人しいいい子をずっと演じてきていました。まあ、大人になってから久しく、ようやくそのことに気づけたワケなのですが。そうしてきたおかげで、本当の自分が本当にやりたかったことを、わからないまま生きてきたことになります。仕事は好きでやってきたつもりでいましたが、仕事をやってもやっても、なにか満たされない気がしていつの頃からか、虚しさを感じるようになっていたのも事実です。
なにかが違う……なぜ、そう思うのだろう。この仕事は、小さい頃からずっと憧れてきたはずだったのになあ。ちゃんと夢を叶えられたのに、この矛盾する違和感って何なの?
きっと私は一生、この仕事を続けていくものと思っていました。
身の周りにさまざまなことが起こり、仕事を辞めざるを得ない状況へと追い込まれて、アヤはようやく仕事を辞める決心をします。次から次へと想定外の出来事に翻弄されながらも、ただひたすら、そのときの役目を果たすことが精いっぱいの日々になっていました。
職場へ通勤することから解放されたアヤは、自由な時間を持てるようになり、直感に従って自分のやってみたい想いを模索する日々となっていったのです。
“正直になろうよ ”
この突然の声かけがきっかけで、アヤは自分の使命を思い出したといいますか、自分が取り組むべきことの方向性を確信することとなりました。誰もが自分らしく生きていい。そのためには、本当の自分と対峙することが必須となります。
自分の本音を知るために、どうしていくのがいいのか。自分自身との関係をどのように築いていくのか。さまざまな手法が世の中に公開されていると思いますが、逆に頭でっかちに陥ってしまっているのが現状のようにも思います。自分を生きる。自分で在ることは、もしかしたら、永遠のテーマなのかなとも思ってしまいます。
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