随分と遠回りしてしまった感も否めませんが、すべて完璧というシナリオ。こんな設定をしてきた自分に、彼女は笑うしかありませんでした。でもそれ以来、アヤは別れた太蔵に対して、「わたしの人生において、いちばん嫌な役を引き受けてくれた人」と思えるようになったのです。

やっと、ようやくアヤは、自分自身を許すことができたように思えました。これまでの演技、完璧に上手すぎだから! 太蔵さん、よくぞ引き受けてくれました。ありがとうございます。

このことがあったあと、彼女の頭のなかにあった “バツイチ ”という言葉が、あっさりと “マル ”に変更されることとなりました。おめでとうございます!

太蔵だけではないですね。母子家庭ではなく、父と暮らす子どもとしての生を選んでくれた子どもたちにも、心から感謝しているアヤです。ビッグチャレンジを見事果たした尊い魂に、限りない祝福が届くことを願うばかりです。

アヤと太蔵は、子どもたちの気遣いを受けながらも、孫たちともそれぞれに楽しませてもらう時間を享受しました。同時に、自分の夢を叶える子どもたちを心底、誇らしく思っていました。太蔵は子どもたちがそれぞれ巣立った後も再婚することなく、父親としての威厳を保ったまま、その生涯を終えました。

一方のアヤは自分自身を許せたあと、もう一度ウエディングドレスを着たい! という夢を持つようになっていました。いろんな価値観が多様化する中、お互いが心地よくいられる関係性を叶えられる新しい形を模索しながら、やがて、パートナーとなるべく男性に出会いました。

アヤが大好きになった海の見える場所で純白のドレスを身にまとい、ヨロコビいっぱいの笑顔が、満天の星空を見上げていました。毎日が「ありがとう」の奇跡です。こんな日が訪れようとはアヤ自身が、いちばん驚いていたかもしれません。祝福のシャワーは、いつだって降り注いでいたんですね。

それを受け取るのか、スルーするのか、選択すれば良いだけでした。この世は本当にシンプルな仕組みのようです。年をとっても元気だったアヤは、月夜のきれいな晩に、遠くに波の音をききながら大往生の人生の幕を閉じることとなったようです。

アヤさん、お疲れさま。少しの間、ゆっくりしてくださいね。次の新しい旅の準備が始まるまで!

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