農業クラブ会長の森本は、演台の上で水産クラブ会長の大河に向き合い、詰め寄った。
「よくガセネタで、決めつけるように言ってくれたな」
「ガセじゃないぜ。『水質』っていう証拠がある」と大河はにらみつけるように答える。
「じゃあ、その水質とやらと、酪農の関係をすべて説明してみろよ」
「……」大河は沈黙した。
「言えねえじゃねぇか。証拠がないんじゃ、お前ら水産科の空回りだ」
「分かった。証拠を見つければ文句は言わねぇな」
「……」今度は森本が沈黙した。
「今日のは貸しにしておくぜ」
大河はグッと森本をにらみつけたまま、こう宣言した。
水産科と酪農科の三・四年生は、だいぶ疲れて勢いがなくなってきた。
このタイミングを中原校長は逃さなかった。
「そこまでだっ!」
決して大柄ではないこの校長から、中庭全体に響き渡る声が発せられた。
「校長が来てたぞっ」
「やべえ、やめるべ」
騒ぎはとりあえず収まり、五時間目の準備にそれぞれ散っていった。