お茶を呼ばれながら、ジグソーパズルについて聞いてみる。

「おじいさんは、なぜジグソーパズルを“空”と呼ぶの? 空の模様だから?」

あたしの質問に、おじいさんは答えるか迷った様子を見せた。しかし、すぐに思い直したのか、何かを決心したような表情で、こう告げた。

「あれは、本当の空なんじゃよ」

「本当の空……? え、どういうこと?」

頭で「?」が飛び回る。

「あれは、この世界の空の様子を決めるために必要なピースなのじゃよ」

空の様子を決めるとは一体どういうことなのか。

「あのパズルは、一通りの天気や、日中、真っ暗な夜などいくつもの“空”を映し出すのじゃ。ただ、ついこの間、どういうわけか一部のピースが飛び散ってしまってのう……。ワシは、そのピースを探しておったのじゃよ。そして、この仕事には、お嬢さん、あんたの力が必要じゃ。これは、お嬢さんの“役目”になるんじゃ」

「あたしの役目?」

お茶の入ったティーカップをテーブルに置く。カチャリと音がした。

「左様。ここは“夢と現実のはざま”での。一時的に役目を全うするために、この世界に呼ばれることがあるのじゃ」

そう言って、彼は一息ついた。

「ここに来る方法は、ここの黒猫、白猫、エドワード、ワシのうちの誰かに導いてもらうしかないのじゃ。誰でも来られるわけではない。来ることができるのは、ワシらと縁がある者のみなのじゃ」

そう言って、彼はズズッとお茶を飲んだ。あたしはティーカップを持ち上げながら、追いつかない思考を必死に追いかけた。考えつくことは、お茶の湯気のようにたちまち消えてしまった。

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