第1部 政子狂乱録
一 蛭ヶ小島
判官が政子のためにと贅の限りをつくした婚姻の祝いも無事終わって、政子は新しい夫の寝所に招かれた。判官は湯文字姿に身を整えた初々しい政子の姿に、股間の一物は、早くもはち切れんばかりに褌を盛り上げている。
しかし反面、彼は政子に対して一抹の不安を感じていた。父の時政の言によると、娘は多少気の強いところはあるが、未通女で男の経験はないと言う。それはそれで大いに結構なことに違いないが、実戦の経験のない娘がはたして自分の一物にうまく順応してくれるだろうか、絵草子など読んで多少の知識は持っていると思うのだが……。
自分で言うのも何だが、己の一物は、そこらの、ひ弱い男衆とは比べようもなく、大きさは無論のこと、その形や色合いに、あまたの後家様たちが随喜の涙で悦んでいるとの自負がある。果たして政子どのと初夜の晩から無理なく交合が果たせるかしら、政子の陰に納まりきらずに嫌われたりしないだろうか。
心配性の判官はそこで一計を案じた。新しく夫となる寝所は、丸行灯の仄かな灯のなかに麝香（ジヤコウ鹿の雄の分泌物からとった香料）が漂って、そこにいる者の心を妖しく掻き立てていた。判官は酒焼けした喉首を動かし、でんと太鼓腹の恰幅を向けて見せた。
「ゆるさっしゃい、政子どの、そなたはまだ閨の心得がない、おぼこであると父上から聞き及んでおる、そこでじゃ、そなたと儂の夫婦の契りが滞りなく果たせるよう、仕儀に及ぶ前に儂とここにいるお豆とでその有様をお見せしようかと思う、およろしいか、何事も勉強じゃで、とくと性根を据えてご覧くだされ」
ゴホンと一つ咳をして顎鬚をなぜまわした。政子はビックリしてしまった。花模様の毛氈布団には、これから自分の夫になる判官と、見知らぬ一人の女御が顔を赤らめながら裸で寄り添っている。
女は判官の妾のお豆の方といい、卵に目鼻をつけたような、小柄な可愛い名前通りの様子で、その鼻が低いせいで二つの穴が前を向いている。歳も政子同様二十前後であろうか、だがその肉置きたるや判官のお仕込みよろしく腰部は瓢箪のようにしなやかにくびれ、重量感のある釣り鐘型の乳房、そして何より浅黒の政子と違って乳白色の艶やかな肌合いを見せている。
（判官どのは、このような女性がお好みなのかしら……）
一方の判官といえば、胡坐をかいたその股間の黒々とした茂みからのぞく男根は、すでに準備万端、隆々とその雄姿を誇り、先端の鰐口も巨大な苔のように広まって、その色彩たるや淫焼けして赤黒くテカリ、入道の禿げ頭と同様である。
判官は政子に、ひとくさり講釈をたれた後、お豆の方の後ろに回って女を羽交い絞めにし、あたかも幼児に小便をさせるような格好で女の両足を持ち上げた。そして重たげに弛む双の乳房を掌で包み込むようにして、ゆさ、ゆさ、と揉み上げる。判官とお豆が政子を前にして、これみよがしとばかり取り組んだこの姿勢は、幼児に小便をさせるような格好で女の両足を持ち挙げ、女が臀部を前後左右と積極的に回転させることで、最も感じる鋭敏な個所を自分で探り当てることができるらしい。
