今日は、スグルに打ち明けたいことがあった。スグルは作詞作曲をするなか、歌を歌うなかで、何を見て、何を感じているか、もっと踏み込んだ話をしていきたいと思っていた。こういった内容は烏滸がましいことであるのは知っていたが、サヤカも本気で向き合いたくなったのだ。
本当のアーティスト性と本当のスグルは、そう変わりはないのだろうか。あるいは、そこに違いがあるとすれば、それはスグルにとっての音楽性だろうから、それは一体どのようなことなのであろうか、など様々な想いの種がサヤカの心のなかでは存在し、脈を打っていた。
電車から観る街並みや時々広がる空、大胆に白く走っているすじ雲、吊革を掴んでいる手や広告。考えてみれば太陽系のなかで何故か一緒の車両に乗り、同じ空気を吸うことになった人々。
スマホを眺めればネットニュースやSNSなど、この一つ一つの縁が重なって、重なって、重なって、今、わたしがこれらに呼応しながら、ようやく生きていられる不可思議な現実。
見知らぬところで見知らぬ世界があり、見知らぬ人々が回している大きな力。融和していく心。地球や宇宙がまるごと家族のような連帯感をもった大きな心。このようなことをサヤカは、何か凛とした想いを持って、受け止めているのだった。