第二章 相続不動産の基本を知る
相続の基本
成年後見制度とは
認知症になると、判断能力が不十分なため、本人に代わって法律行為を行う成年後見制度があります。成年後見制度は、大きく二つに分かれます。
(一)法定後見
法定後見は、すでに認知症などを発症してしまっていて、判断能力が不十分な場合に、家庭裁判所に申立てをして、選任された後見人などが本人に代わって法律行為を行う制度です。法定後見は、本人の判断能力の程度によって、三つに分かれています。
1)後見 判断能力を欠く状態にあり、日用品の購入など日常生活に関する行為以外は、成年後見人が本人を代理して契約などの法律行為を行ったり、本人がした不利益な法律行為を取り消したりすることができます。なお、被後見人の自宅を売却する場合には、家庭裁判所の許可が必要です。
2)保佐 判断能力が著しく不十分な方で、日常の生活には支障がないけれども、不動産の売買やお金を借りるなどの法律で定められた一定の行為をする場合には、家庭裁判所が選任した保佐人の同意を得る必要があります。
3)補助 判断能力が不十分な方で、三つの中では一番程度が軽い方です。家庭裁判所の審判によって、あらかじめ定めた特定の法律行為について、補助人に同意権・取消権・代理権を与えることができます。
(二)任意後見
任意後見は、まだ判断能力がある段階で、自分自身で後見人を選ぶことができる制度です。法定後見の場合には、後見人候補者に親族を記載していても、被後見人となる方の状況や資産によっては候補者である親族が選ばれずに弁護士や司法書士などの専門家が選任されるケースもあります。
一方、任意後見では、自分が信頼している人を選ぶことができますので、安心して任せることができるでしょう。ただし、任意後見契約を結んだ場合でも、認知症を発症したあとは、家庭裁判所に申立てをして、任意後見監督人が任意後見人の仕事をチェックします。任意後見監督人へ支払う報酬がかかります。
後見制度は本人の財産を守るためにいい制度ですが、手続きに時間がかかり迅速性に欠けるのが難点です。財産状況や家族関係などから、本当に後見制度が合っているのか、いろいろと考慮が必要です。亡くなったあとの相続の基本についても説明していきましょう。
どのように相続されていくかは、簡単にいうと、遺言があれば遺言書のとおりに、無ければ相続人全員で遺産分割協議をおこなって誰が何を相続するのかを決める。遺産分割協議を行わないもしくは整わない場合には、法定相続分での相続になります。それぞれを詳しく説明していきます。