バザー・ナーダ(ナンを売る尼僧など)
一人の女性が、白いサーリーを身に纏い、黒髪にオレンジ色のヘアバンドを締め、眉間に黒いほくろをつけて、すらりと背高く、白い、あくまで白い腕を、しなやかに曲げかつ伸ばしつつ、しとやかに艶やかに口上を述べつつあった。
「さあ、どうかこれを見てくださいませ。これは何と言い、何と呼ぶものでございましょうか。まさにこれはナンと言い、ナンと呼ぶものでございます。南の国の日常食でございまして、賤しき乞食の方々からいとやむごとなき聖者の方々に至るまで、日々食する日常食でございます」
そう口上を述べつつ、しとやかな修道女とも比丘尼とも西の国のnunとも言えるような店の女性は、右手の手のひらに載せた一枚の平たいナンをくるくると回し始め、徐々に薄く広く伸ばして行き、瞬く間に手のひらの三倍、手のひらの十倍にもし、右手から左手に移し、移しつつさらに大きく広げた。
と、ふいにそれを頭上に放り、背中の後ろ手で受け止め、前に移すや、くるくる回しつつ、さらに大きく広げた。そして、今度は、それを空中に放り上げるや、さあっと、身に纏う。途端に、それは白いサーリーそのものとなって、女性の白いサーリーと重なり、区別がつかなくなった。
やがて、女性はその一端を指でつまんでさあっと引き下ろし、斜め前方へ放って吹き流しのごとくにし、今度はそいつを首の方へ引き寄せ、スカーフのごとくに何回りも首に巻き付けた。と見る間に、そいつをぐっと引っ張ってくるくると丸めて行き、一個の球体にまで丸めた。するとまた手のひらに載せられ、ぽいっと、押されて、元の平たいナンに戻った。