中学生活開始

二 バレーボール部入部

沢井監督がエリの傍に来る前に、真凛ちゃんがエリを抱き起して、怪我がないか確認した。エリは、一瞬気を失ったが、幸いにもバレーボールの球はそれほど固くなく、反発しやすいので頭への打撃はなかったようである。エリは頭を左右に振ってしっかりさせると、ゆっくり立ち上った。

「神山さん、大丈夫なの」

沢井監督が心配そうに見つめた。

「バスケの山田監督にはしっかり苦情を言わなきゃならないわね」

沢井先生は大きな男子生徒が小柄な女子をからかって怪我をさせそうになったことを職員会議でも問題にしなければと思った。水島健一君と田代広大君の二人は、翌日の朝練で山田監督に呼ばれ、こっぴどく注意を受けた。

「小さい女子生徒にボールをぶつけるとは何事か。今後バレーボール部の練習場所に立ち入るのは禁止する。弱い者いじめをするのはスポーツマンとして一番恥ずかしいことだ。今度こんなことがあったら、退部とする。いいな」

二人とも、

「すみませんでした。今後は気を付けます」

と恥ずかしさに真っ赤な顔をして頭を下げたが、内心では、反省するどころか、

(もっとうまくやらなきゃいけなんだな)

と思っていた。エリの部活はなかなか上達しないままにどんどん日が経ち、新人戦を迎える時期が迫っていたが、誰もエリに期待していなかったので問題はなかった。自分では運動音痴だと言っていた山村可憐ちゃんは、細い体に意外とバネがあり、長身を活かせるので、来期への期待を込めて補欠選手としてベンチ入りに選ばれた。