第三章・緊急入院
重美だ。
さっきから少し腹が痛そうだったが、顔が青ざめていた。黒い顔でもはっきりとわかった。やばい。油汗をかいている。
「どうした。重美」皆、声をかけた。
「腹が痛む。結構厳しい」見た目でもわかった。打撲や打ち身ではなさそうだ。時間が経ちすぎている。内臓がやられている可能性もある。重美は今日の試合ではトライも挙げ、張り切っていた。「すぐに病院へ行ったほうがいい」と先生たちが言った。
直の車で名古屋の大学病院へ行くことにした。女子たちが付き添うことになった。キミ、ナオミ、ミッコだ。きれいどころに付き添ってもらえば重美の気持ちも多少は和らぐだろう。
高速を飛ばして病院へ向かった。俺たちは同窓会の会場で待つことにした。慌ただしく、先輩後輩たちに、「また、いつか試合をしましょう」と、約束をして俺たちは親睦会会場を後にした。
今日は仏滅か? 全て、終わりに何かある。
六回生の同窓会の会場は、世古の友人である森くんの店「すゞ家」だ。大須にある老舗中の老舗、名店だ。テレビでも紹介され、多くの芸能人も来店している。俺たちの中では名古屋でとんかつと言えば、この「すゞ家」だ。仲間うちではよくこの店に集まっている。
世古。六回生の中で一番の有名人だ。バスケット部出身。顔が広く誰とでもすぐ親しく出来るキャラクターで、仕切り屋だ。(単になれなれしいだけ? という説もある。)
飲み会の幹事や人集め、冠婚葬祭の情報発信も常にこの男がやってくれている。頼りになる男だ。俺は大学も一緒だった。大学時代に、俺がやはり同級のベンと一緒にバイトをしていた喫茶店に、毎日のように一日中居座っていたため、店長から
「そんなに毎日、居座られていては邪魔だ。暇なら店を手伝え」
と言われてそのまま二年間一緒にバイトをした。腐れ縁の親友だ。一日中居座っていたのは、もちろん俺やベンに会いに来ていたわけではなかった。目当ては店の女の子であったのは言うまでもない。同窓会には、記念試合を見学に来てくれた女子たちの他に懐かしい顔ぶれがそろっていた。