第三章・緊急入院

重美の病室を出て俺たちは病院内の喫茶店に入った。キミを名古屋駅までナオミの友人が送ってくれるそうだ。それまでの時間つぶしだ。昨夜からの続きでキミとの思い出話がつきなかった。

迎えが来た。

「またな、キミ」と俺が言った。

「また、東京の家にも遊びに来てね。久しぶりに皆に会えて楽しかったわ。いろいろあったし」

「ああ。またこいつらと行くわ」

今度はいつ会えるかわからないが、約束をして別れた。

「直。東京勢の先輩たちも今日帰るのか?」

「おう。今日帰ると上床先輩から連絡があったよ。重美の容態を心配していた。朝、俺たちより先に見舞いに来てたらしいぞ」

「何? さすが、上床先輩だな。また、来月の練習に来てくれるかな?」

「出張がなければ先輩たちは来るぞ」

「そうか。わざわざ東京や長野から練習に来るんだもんな。地元にいる俺たちが人数そろえておかないといかんのだがな」

「そうだな。先輩たちは蟹クラブをラグビー協会に正式登録して、社会人チームとして活動したいと考えているらしい。いずれラグビースクールも作りたいと言っていた」と直。

「社会人チーム? ……そうか。本格的だな。しかしメンバーそろえるのは大変だぞ」

「今回集まらなかった六回生の皆にもう一度連絡をしてみるよ。それにここに世古もおるしな」

「なんだって? 俺はバスケット部でしょ。ラグビーは無理だがね。それに昨日までお前たちがまたラグビーやっとるとは知らんかったぞ」

「昔、お前にもラグビー部の試合に出てもらったがや」直。

「三十年も前の事でしょ。しかも一試合だけ。それにボロボロになった記憶しかないんですが」

「たしかに。あの時はボロボロだったな。そうなるまで頑張ってくれたのを思い出すよ」と俺が言うと

「あの三十年前の時と同じ事やっとるぞ。お前たち。いつもメンバー集めばかりしていた。進歩がないな」と世古。

「大丈夫。お前なら問題ない。よし、一名増えたな」

「人の話を聞いとる? 勝手に決めるな。無理。絶対無理。重美みたいに入院することになるでしょ」

「大丈夫。重美は仮病だで」と直。

「そういう展開になるか?」世古が言った。

俺たちの次の目標が決まっていた。

こうして、俺たちの「記念試合」はようやく終わった。

二日ほどで重美は無事退院した。原因はやはり不明だった。