港町のはずれにあるそれらしきお店のドアの前で、しばし立ち止まる妹。お店の外観は、あまりきれいには見えませんでした。にぎやかな街に紛れて建つ、ちょっと古ぼけた、年季の入った建物のなかにお店はありました。2~3回深呼吸してから、彼女はドアの奥へと入っていきました。入り口らしきところに窓越しにフロントがあり、大柄の男性がひとり。

「あのう、働きたいのですが……。雇っていただけないでしょうか」

大柄な男性は、彼女を上から下までさっと見ると、

「お嬢ちゃん、ここはどういう場所かわかって来たのかい?だいぶ若そうに見えるけど、その、なんだよ。経験はあるのかね?」

「あっ。はい、一度だけですが……」

妹は咄嗟(とっさ)に、嘘をついていました。

「そうかい。それなら、面倒なことは特になさそうだな」

そう言いながらまた男性は、彼女の全身をチェックするような目つきで見るのでした。奥の部屋から、お客らしき若い男性がひとり、こちらへ向かってきます。フロント前で

「じゃあ、また!」

と手を振って外へと出ていきました。彼女とすれ違いざまにその若い男性も、彼女の身体つきを確認するかのような視線を飛ばしていました。彼女は猛烈な恥ずかしさを感じながら、息をごくりと飲み込みます。彼女の表情と雰囲気から、店の男性は、彼女の先ほどの嘘を一瞬にして見抜いたかのようです。

「お嬢ちゃん、ちょうど仕事を終えた姐さんから、店の案内と仕事の段取りを聞くといいよ。ちょっと待っておいで」

店の男性はそう彼女に伝えると、先ほどお客が出た部屋へと向かっていきました。この後、彼女は真剣に話を聞き、初めて迎える本番に備えるために、神さまにお祈りを捧げていました。ワタシはお兄ちゃんに、どうしても恩返ししたいだけ。お兄ちゃんを助けたいの。

「神さま、お祈りします。お兄ちゃんの問題が、どうか無事に解決できますように。お兄ちゃんもワタシも、これからもずっと仲良く暮らせますように。世の中が平和で明るく、皆がしあわせでありますように。ワタシはそのために、よろこんでワタシのすべてを捧げます。神さまがいつもワタシとともにいてくださり、守ってくださる。だから、ワタシはどんなことがあっても自分を信じ、神さまからの愛を受け取ることができます。この素晴らしい奇跡に、心からの感謝を捧げます。あなたを愛しています。ありがとう」

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