盛りあがっていた談笑が途切れたところで、
「そろそろ挨拶回りしてから大学に戻るわ」
立花が時計を見ながら言った。
「あれ、また戻るんですか」
「うん。研究所のイケメンたちと夜のデートがあるの。暇だったらいつでも研究所に遊びに来て。でも、山北の件は本当に頑張ってよ。このままでは自然のしっぺ返しを食らうわよ」
立花が高取の肩をポンと叩く。
「そう言えば、年々カラスが増えてゴミの散らかしがひどい」
「そりゃカラスだって寝床が減れば街に押し寄せて来るわよ。じゃね」
立花は去っていった。
「二十年近く経つのに相変わらずきれいだ」と村野がつぶやいた。
「それに強さがある。自分のやりたいことを貫き通している強さが」
田中が感激した様子で言う。
「真栄高で新卒採用されるくらいだから元々優秀なんだろうけど、相当努力もしたんだろうな」
「そうよね。真栄高を辞めてから自力でドイツへ留学したんでしょ。でも、夢の実現に向かって突き進む覚悟を持てるのも才能よね」
三村の言葉にみんながうなずいた。
「つまるところ動物愛、自然愛のなせる業ってわけか。俺たちも郷土愛に覚悟を持たなきゃな」
吾郷がそう言って高取を見つめると、彼はドキッとした顔を見せ、「そうだよな」と自分に言い聞かせるように言った。