内科に行くべきか眼科に行くべきかの選択は患者自身に任されるのですから、その判断は決して容易なことではありません、患者側も身体について基礎的な知識を持つべきではないかと思います。果たして普通の神経衰弱と眼性神経衰弱は別の病気と分かつべきものでしょうか。

本書で紹介する前田珍男子博士は同じものと考えています。さらに中村辰之助博士と西村美亀次郎博士も同様です、三人の医師は神経衰弱の本質は眼性神経衰弱であるとして、眼科的な処置を施すことで神経衰弱の治療を行いました。

次に一般の教科書に記載されている眼精疲労について記しておきます。いずれの教科書も内容的には概ね次のような記述が多いようです。

「眼精疲労の定義」

《原因》眼精疲労には眼球運動が関わる調節性眼精疲労と、筋性眼精疲労と、内科的な神経性眼精疲労があります。

《症状》眼を使う仕事を続けてするとき、健常者では疲れない程度の仕事でも容易に疲れて、前額部の圧迫感、頭痛、視力減退、複視、甚だしい場合は吐き気、嘔吐までも起こすにいたる状態をいいます。

《治療法》眼の使用を控えめにし、原因の治療に力を注ぎます。つまり、屈折異常や潜伏斜視(斜位)は、メガネその他の方法で矯正し、身体の活力を高めます。精神安定剤、ビタミンB、ATPなどを投与します。

※すぐる大戦中は本症患者をほとんど認めず、終戦直後に激増しました。眼の異常に起因したもの、全身疾患、悪環境下での作業などによるものに大別されますが、同じ疾患や条件下で訴えないものも少なくなく、いずれにしても心因性原因とそれに対する反応というノイローゼや精神神経症の性格を持ったものであるから、治療に当たってもその方面への配慮を要します。(仁田正雄著『眼科学』、p16参照)。

※神経性眼精疲労はヒステリー、うつ病、精神的なものが原因して起こるので甚だ治療困難なものである(『南山堂医学大辞典』より)。

※もともと視力の良い人がこれを訴えることが多く、眼自身の疲労よりも、むしろ持続して明視を得難いための焦燥感が主な原因となります。(石原忍・鹿野信一著『小眼科学』p10参照)。