目の前に三人いた。一人かわした。あと二人。そのすぐ後ろにゴールラインが見えた。そのまま突っ込んだ。右横からタックルに来た。かわせるか? 左へ飛んだ。かわした。俺はそのままゴールラインを超えた。
トライだ。二十八年ぶりのトライだった。今さらながら感動した。こうしてトライが生まれるのだ、と改めて思った。十五人が一人のために、は決して大げさではなく肌で久しぶりに感じた瞬間だった。味方のチームみんなの誇らしげな顔がそして笑顔が嬉しかった。俺たち白組の勝ちで試合は終わった。
応援に来ていた女子たちは? 昔話に花が咲き、会話に夢中で誰も試合など見てはいなかった。
「もう終わったの?」
とナオミが言うと、
「で? どっちが勝ったの?」
とユカリ。……残念。まあ、仕方ないか、こんなもんだな。こうして記念試合は終わった。久々の試合。本当に楽しかった。
けが人は? 皆、声を掛け合い身体を心配した。例の130㎏の川浦が薬指を骨折していた。
「大丈夫か?」
声をかけた。
「大丈夫です」
と愛嬌たっぷりの笑顔で返事が返ってきた。
「俺たちが病院へ連れて行きます」
と川浦の同期の貝沼と若山が言った。この二十代の三人トリオが今回の試合で一番活躍していた。若いだけある。スピードが違った。この三人も何度も事前の練習に参加してくれていた。後はさほど大きなケガはないようだ。擦り傷は皆、数カ所あるが、ラグビーではケガのうちに入らない。安心した。
この後、近くの店で親睦会が用意されていた。皆帰り支度を始めた。この学校で、もう二度と試合をすることがないと思うと本当に残念だ。記念写真を撮り、皆同じ思いで学校を去ろうとしていた。