第二章・記念試合 ~二度目の卒業式~
二〇〇七年三月十日(土)
季節は三月。春。数日前に、閉校式が行われた。
開校以来、三十六年の歴史に幕を下ろしていた。そして、今日が俺たちの二度目の卒業式だった。立場が変わり、今度は「学校」が去っていく、とてもつらく悲しい卒業式だ。
校門を出ようとしていた時だ。校門から国道一号線まで真っすぐに続いているその道を、一台のパトカーが向かって来た。
「ん? こっちに来るぞ?」光先輩が言った。
「誰か何かしたか?」
皆、光先輩を見た。(……すみません)
卒業式にパトカーは付き物? 俺たちの時代、本当の卒業式でもパトカーが来るような卒業式はなかったはずだ。パトカーが校内に入って来た。体育館の前で停まった。
「何だ?」
「何が起きた?」騒然となり始めた。車上荒らしだった。
今日試合を見に来てくれた五回生の女性の先輩の車の窓が割られていた。グラウンドからは陰になるため、試合中にやられたようだ。
「今日の試合の件が新聞に載っていたため、狙ったのかも知れないね」と警官が言った。
……後味の悪い記念試合となってしまった。
親睦会会場についた。会場で、「皆でラグビーを続けないか」と十回生の柴田と中広が誘っていた。蟹クラブへの勧誘だ。この二人も今日まで毎回練習に参加してくれていた。体格ががっちりした心強い後輩たちだ。
スポーツ保険の加入と、ユニフォームの購入を勧めていた。俺は当時の背番号が空いていたので2番を選んだ。しかしながら皆の反応は今いちだった。
皆、仕事もあり家庭もある。ラグビーとなるとそう簡単には、気軽に出来るスポーツではない。やはりケガが一番怖い。あまり加入希望者がいなかった。残念だがしかたない。貝沼たち若手三人以外はほとんど四十歳以上だった。
親睦会では、高校時代の試合や先生方の厳しい指導(?)話で盛り上がった。
「相木はポジション、2番だったよな」
三浦先輩から声をかけてもらった。
「はい。フッカーでした」
「今度、試合するときは一緒にスクラムを組もうよ」
「そうですね。ぜひ。身体を鍛えておきます」
嬉しかった。一年の俺たちは三年の先輩方とは一緒に試合に出たことがなかったからだ。
親睦会が終わりに近づき、次は俺たち六回生の同窓会だ。毎年、年末には結構集まるが、メンバーは大抵決まっている。しかし、今回は仕事や結婚で名古屋を離れているメンバーも集まるから楽しみだった。
親睦会が終わり、皆で店を出た。そのとき、また事件が起きた。