【前回の記事を読む】“現代のクルマ好き”に伝えたい!知られざるクラシックカーの魅力とは
車社会の行く末はどこ
“胸中成竹”
“胸中成竹”とは、画家が竹の絵を描く時に、頭の中に描きたい竹の姿を思い浮かべ、一気に絵を仕上げるという話である。転じて、万全の準備をして新しいことを一気に成し遂げるという意味である。
先日、『朝日新聞GLOBE』(朝日新聞社、2021年2月7日発行)に元F1ドライバーで、昨年の世界耐久選手権というレースでチャンピオンになった小林可夢偉さんの話が載っていた。もうすでにそこまでいっているのかという驚きの話がたくさんあった。
小林さん曰く、
・今乗っているトヨタのレーシングカーは電気とガソリンを合わせて1000馬力のハイブリッド(HV)車であること
・そのレーシングカーはガソリン車以上のパワーがあるし、燃費も良く、ガソリン車のようにパワーロスがないエコな車であること
・才能で速く走れるのはある程度までで、そこから先はハイブリッド車のツールをいかに使いこなせるかにかかっていること
・ ステアリングには多くのボタン(写真で見る限り10個以上)が付けられており、ほとんどの操作はステアリング上で行う
・運転の技術を高めるためのトレーニングは、ジムで自転車をこぎながらスマホで最速のテトリス(ゲーム)をやること
・F1にも電気自動車や水素自動車(FCV)のクルマが参加する時代になる
・ハイブリッドのレースカーは運転していてとても楽しいもはや、私たちが良く知っているF1ドライバーの、古くはニキ・ラウダ、アイルトン・セナ、ミハエル・シューマッハ、アラン・プロストなどがドライビングテクニックでF1チャンピオンになった時代とは隔世の感がある。
小林可夢偉さんの話を読んでいると、時速300キロを超えるスピードで走る車をコントロールするのは“腕っぷし”や体力、ましてや、従来の運転技術ではなく、ゲームのコントローラーをいかに正確に速く操作できるかというところにかかっているように思えた。もちろんそれには鍛え抜かれた身体と強い精神力が伴っていればこそとは思うのだが。
小林可夢偉さんの「カーボンニュートラルの時代になっても車の運転は楽しい」(『朝日新聞GLOBE』朝日新聞社、2021年2月発行より)という言葉を信じたい。