エッセイ 『毒親の彼方に[注目連載ピックアップ]』 【第17回】 袰岩 秀章 寝たいのは彼じゃない。本当は、わたしが抱かれたいだけなのかもしれない。寂しさを埋めたくて―― 【前回の記事を読む】「わたし、いけない子なんです。母が本当は大嫌いなんです。ほんとは彼のことは好きでも何でもないのに……」「彼のところに行くと彼は求めてくるんです。いやって言えないでしょ? 他に行くところがないんですから。でもいやって言っても、彼はわたしのことを追い出したりはしません。そういうことはあったし、そういう人なんです。そんな悪い人じゃないんです」「いけないのはわたしです。彼のこと好きで…
小説 『箕山遺稿』 【第2回】 驪城 卓爾 「もう彼が亡くなったと思うと…」亡き友の最後の葬式に出席することさえ、私はできなかった。 【前回の記事を読む】若くして亡くなった驪城卓爾(こまき たくじ)。短編小説、短歌、詩などを収録した遺稿集の復刻改訂版!驪城卓爾君が亡くなった。この事実が私には不思議にも淋しい感じを与える。平生ほとんど忘れている位であるのに、どういうものであろうか。惟(おも)うに驪城君が、日本の国のどこかに生きていてくれて、一度は逢うて、笑って昔を語るときがあるであろうということは、私にとっては一の楽しみであり喜…