ヒョンソクが頭を上げると、もの問いたげな表情が彼の顔に浮かんでいた……ヨンミは彼の目をじっと見つめ、理解した。
「ええ」彼女は言った。
「結婚したわ、一度。夫はずいぶん前に他界したの。娘が一人いて、結婚して早くに家を出たわ。ジョンスはどうなの、彼は結婚している?」
「ああ、俺には孫娘が一人いるよ」
「可愛いでしょうね。あの……ジョンスは私についてどれだけ知っているのかしら? あの子の話を聞いたら急に気になっちゃって」
ヒョンソクはしばらく躊躇ったあと、口を開いた。
「何も知らない。名前も、年齢も」
深い後悔がヨンミの顔をよぎった。彼女は尋ねた。
「ジョンスは何をしているの?」
ヒョンソクはしばらく押し黙り、そして言った。
「彼もヘグムの演奏家をしている。俺と同じように」
彼らは再び沈黙した。ヒョンソクはヘグムの話が始まると元気がなくなり、突然、この会話に疲れを覚えた。ヨンミは彼の気分の落ち込みを見て取り、雰囲気を明るくするために質問した。
「まだその指輪をつけているの?」
ヒョンソクは一瞬戸惑ったが仕方なく言った。
「指が太くなってしまって……簡単に外せなくなってしまったんだ」
ヨンミは微かにほほ笑み、彼の財布に入っていた写真を眺めた。そして落ち着いた表情で彼に訊いた。
「この写真は、ずっとあなたの財布に入っていたの?」
ヒョンソクは彼女を恥ずかしげに見て、それから言った。
「ここに来る前、故郷のことを考えていたんだ。それでアルバムからその写真を抜いてきた……」
「三十年経つというのに、こんなにいい状態に保たれている―その間、とても大事にしていてくれたに違いないわね」
ヒョンソクは何も言わず顔を赤らめ、下を向いた。