【前回の記事を読む】人材育成を支援する「キャリアコンサルタント」国家資格化された目的とは!
第1章 これからの人材育成に動機づけ面接が持つ可能性
第2節 人材育成に関する政策の現状と現実的展望
4 能力開発より雇用形態が年収を規定
前段では第10次、第11次計画を通じて、個々人に自律的.主体的にキャリア形成を促進するための国の施策を見てきました。大枠としては①シニア、若者、女性、障がい者等が総活躍できる働き方改革、②企業によるSociety5.0社会を担う人材の育成強化支援、③個々人のリカレント教育、④労働移動を側面支援するキャリアコンサルタントの育成です。
当然のことですが、国の政策が示されてもそれだけで上手くいくはずもありません。人材育成と働き方改革を期待される企業側にも、会社が存続していくための経営戦略が必要です。1955年から1973年まで約20年続いた高度経済成長期、経済成長率(実質)は年平均10%前後の高い水準でした。そして、その高い成長率を支えたのは、経営戦略としての日本型雇用慣行でした。
その具体的特徴は、終身雇用、年功賃金、企業別組合が挙げられます。しかし1990年代バブル後の不況以後、終身雇用を前提とした日本型雇用慣行が人件費削減のため見直され、かわりに欧米型の成果主義が注目されました。
さらに2000年代に入り小泉政権下で労働者派遣法が改正され、製造業および医療業務への派遣が解禁され契約社員、派遣社員、パート、アルバイト等の非正規社員の割合が労働者人口の30%を占めるようになりました。
総務省「労働力調査(詳細集計15)」によれば、2020年は非正規雇用労働者数が2090万人に上り、役員を除く雇用者の37.2%となっています。さらに、非正規雇用労働者のうち230万人は正社員として働く機会を得られず、不本意ながら非正規労働を選択したとした回答しています。
久我尚子氏の調査16によれば、現在の労働者の年収は、学歴よりも、正規雇用者か非正規雇用者かという雇用形態による違いが大きく、その傾向は男性で顕著であるとされています。この不公平感を是正する政策の一つとして、パートタイム.有期雇用労働法が施行(大企業2020年4月1日、中小企業2021年4月1日より施行)され、不合理な待遇差が禁止されました。