【前回の記事を読む】AI社会で本当に求められるリーダーになるための3つの心得!

第1章 これからの人材育成に動機づけ面接が持つ可能性

第2節 人材育成に関する政策の現状と現実的展望

1 労働者の自律的・主体的なキャリア形成の推進に向けての政策

ここでは厚生労働省が公表している報告書等により、デジタル社会に向けた国の基本的施策を具体的に見ていきましょう。どのような立場で仕事をするにしても、国の政策を知っておく必要があります。

現在の政策を知る上で参考になるのは、「第11次職業能力開発基本計画(注1)」です。厚生労働省が令和3年度(2021年度)から令和7年度(2025年度)までの5年間にわたる職業能力開発の基本的施策を示したものです。5年ごとに策定されるこの計画に基づき、現在の労働者へのキャリア形成支援の施策は実施されています。

この計画の中では主に、①新型コロナウイルス感染症の影響によるデジタル技術の実装の進展、②労働市場の不確実性の高まり、③人生100年時代の到来による労働者の職業人生の長期化、以上の変化に対応できるように個々人に自律的・主体的にキャリア形成を促すための方策が具体的に述べられています。

同時に「第11次職業能力開発基本計画」では、労働者に求められる能力の急速な変化と職業人生の長期化・多様化が同時に進行する中で、失業なき労働移動が必要としています。Society5・0社会を前提として、企業内でIT人材の育成強化など企業における教育訓練を効果的に行うことや、全員参加型社会の実現に向けた個々人の職業能力開発の推進が必要であるとしています。

2 キャリアコンサルタントが国家資格化された意味

ここからは少し時間をさかのぼってお話しします。

厚生労働省は「全員参加型社会の実現に向けた個々人の職業能力開発の推進」という方針のもと、企業の中での人材育成を側面支援する役割を担う存在として、「キャリアコンサルタント」を位置づけました。これについては一つ前の計画である「第10次職業能力開発基本計画」(2016年から2020年まで)で次のように明記されています。

「経済社会環境が急速に変化する中で、個々の労働者の能力を最大限に活かしながら、人材の最適配置を図るためには、職業訓練制度と職業能力評価制度を車の両輪としつつ、これらを支える人材としてのキャリアコンサルタント等、……以下略(注2)

まず第10次職業能力開発基本計画の初年度にあたる2016年(平成28年)には、「キャリアコンサルタント」が国家資格化されました。それまでの「キャリアコンサルタント」は、多数の民間団体がそれぞれに養成講座を行い各団体独自の資格認定により養成されていました。

それらの民間機関が改めて、国家資格キャリアコンサルタント養成機関として国に登録し、さらに2016年(平成28年)「特定非営利活動法人キャリア・コンサルティング協議会(注3)」をキャリアコンサルタント試験の登録試験機関並びにキャリアコンサルタントの指定登録機関として位置づけることにより、計画的な養成の基盤が整えられたのです。


(注1)厚生労働省「第11次職業能力開発基本計画」https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/000760059.pdf

(注2)厚生労働省「第10次職業能力開発基本計画」https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11801000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku-Soumuka/0000122975.pdf

(注3)翌2017(平成29)年「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会」に名称変更