第1章 これからの人材育成に動機づけ面接が持つ可能性

第1節 第四次産業革命時代に必要な素養

1 これからの人材育成に動機づけ面接が持つ可能性

動機づけ面接について、あなたはどんなイメージを持つでしょうか。

アルコール依存症治療の専門家であるウイリアム・R・ミラー氏とステファン・ロルニック氏が1991年に執筆した著書により、動機づけ面接の行動変容に対する有効性が広く知られるようになりました。

依存症からの回復援助を主たる目的として書かれたこともあり、未だに専門家が学ぶものというイメージを持っている方も少なくないでしょう。しかし実際は専門家でなくとも動機づけ面接は学べば誰でも身につけることができます。そして対人支援の専門家だけでなく、ビジネスパーソンにとっても、これからのデジタル社会でリーダーシップを発揮するために大いに役立つ対話スタイルなのです。

これまで産業分野で最も知られている対話法は、ビジネスコーチングだと思います。ビジネスコーチングは相手の目標達成、問題解決、技能向上の促進を援助するコミュニケーションと言えます。個人と組織の利益向上には大変有益な対話法です。学んだことのあるビジネスパーソンも多いでしょう。

一方で、上手くいかなかった場合もあるのではないでしょうか。それは、コーチングの対象者はモチベーションがあることが前提だからです。

例えば、やる気がない人ややりたいことがよくわからない人、うつ状態などメンタル不調を抱えている人は、コーチングの対象外(アンコーチャブル)とされています。もしかしたらこれが、あなたがコーチングをやってみて上手くいかなかった理由かもしれません。では動機づけ面接は、ビジネスコーチングとどう違うのでしょうか。