【前回の記事を読む】いまだ大きな課題・人材育成…現代の企業に生じた「ひずみ」とは?

第1章 これからの人材育成に動機づけ面接が持つ可能性

第2節 人材育成に関する政策の現状と現実的展望

6 人材育成や能力開発にはマインドの転換が不可欠 

厚生労働省から2016年に公表された「働き方の未来2035~一人ひとりが輝くために~報告書」では、「働き方」について次のように述べられています。

「2035年には『働く』という活動が、単にお金を得るためではなく、社会への貢献や、周りの人との助け合いや地域との共生、自己の充実感など、多様な目的をもって行動することも包摂する社会になっている。誰かを働かせる、誰かに働かされるという関係ではなく、共に支え合い、それぞれが自分の得意なことを発揮でき、生き生きとした活動ができる、どんな人でも活躍の場がある社会を創っていくことになる。自立した個人が自律的に多様なスタイルで『働く』ことが求められる。つまり『働く』ことの定義、意義が大きく変わる」

この部の冒頭で紹介した「第11次職業能力開発基本計画」は「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」を具現化するための計画です。

しかしながら、人も組織もそう簡単に変われないのが現実です。まず企業側ですが、前述の調査で示されたように、人材育成はOJT、OFF ― JTともに正社員に対して実施するという意識が当たり前のように残っています。

これからの人材育成は、個人も組織も意識を変える必要があります。シニア、若者、女性、障がい者等も含め総活躍できるためには、企業は労働人口全体の約40%に上る非正規雇用労働者を、人材育成の対象としてみなしていく必要があるでしょう。次に労働者側ですが、2017年(平成29年)に公表された経産省「雇用関係によらない働き方」に関する研究会の報告書19によると、日本の働き手全体に「能力・スキル形成意識」が低いことがわかっています。

個人がこれまで企業に雇用されているかどうかによらず、調査対象の半数以上が自己啓発やスキルアップに使っているお金を「0万円」と回答しています。

実質、日本の働き手の人材育成は、企業が提供するセミナーや研修によって支えられているのが現状です。DX加速化等の社会変化に伴い、雇用によらない働き方が浸透することが予想されるなか個々の労働者も、根強い就社意識から脱却し、オンデマンド等を活用した生涯学習等、自律的な職業キャリア形成へのマインドセットが不可欠でしょう。