車社会の行く末はどこ
あっという間に到来する電気自動車、燃料電池自動車だけの世界自動車市場
私が昭和45年から50年過ぎにかけての日本のモータリゼーションの最初の絶頂期からの生き証人として、百花繚乱のクルマの話を“現代のクルマ好き”に伝えておきたいと思ったのがこの文章を書こうと思った動機である。
個性的なエンジン音、排ガスの臭い、車体の振動、ギヤチェンジする時のシフトノブの感触、左足クラッチの微妙なタッチ。みな、どんどん無くなってゆく。
ガソリン車のように、振動も音も臭いも、また爆発的な回転の上昇もないであろう近い将来のクルマが、モータリゼーション華やかなりし時代の楽しいクルマとは全くの別物であるということも伝えておかなければいけないと思う。偏見かもしれないが、これから主流となる電気自動車に乗って、クルマってこんなにつまらないものなのかと思わせてはいけないのではないかと思うのだが。
しかし、数は多くないが今この瞬間にも私が胸をときめかすようなクルマ、例えばトヨタのGRヤリスなどが発表されていて、悲観的なことばかりではないと思いたい。思い出と現実の間で揺れ動く、ガソリンの臭いと振動が好きなベテランドライバーのセンチメンタルな提言と思っていただければ幸いである。私はこの本の中で最も多く話が出てくるトヨタ、日産にはやはり特別な思いがある。
あらゆるエンジンの可能性を追求して、この期に及んでも選択肢を広げるトヨタに対する畏敬の念と、反対に電動車、電気自動車に突き進む、かつての“技術の日産”に対する郷愁の念が筆者の根底には流れていることが、この文章をお読みいただいた方にはおわかりいただけると思う。