エッセイ 2022.10.07 【エッセイ】兄は今でも少年のまま...「三月はつらい月」 花と木沓 【第2回】 おのちよ どんなにのろくても、春は必ずやってくる 画家・小野千世の幻の絵日記を書籍化。 先の見えない不安に寄り添う、物静かな北国からの風のたより。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 心に傷を持つ少女・ちよは、修道院で暮らすことに。教室に漂う牧草の香り、修道女たちのせせらぎのようなコーラス、響き渡る鐘の音…神様に見守られながら過ごす日々は、寂しくも温かく、ちよの心をほぐしていく。画家・小野千世の幻の絵日記を書籍化。※本記事は、おのちよ氏の書籍『花と木沓』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。 二月二十七日 今朝別れた、なつかしい母上様 写真を拡大 この大切なお手紙と私とを乘せて、赤い馬橇(そり)は雪の石狩原野を走りつづけました。 写真を拡大 夕日が、その最后の輝きで、雪原をバラ色に染め上げた時、地平線にポツッと〟何か〝が、現われ、だんだんに近づいて、小さな橋になりました。質素な橋は、どこもすっかり白樺の枝や幹で作られていて左右の手摺の枝はPAX・DOMINEと文字のかたちに組まれています。それは、お母さん「主の平安」と云う意味なのです。これが、マリア院の入口でした。 写真を拡大 写真を拡大
小説 『終恋 [人気連載ピックアップ]』 【第4回】 高生 椰子 初恋の人と40年ぶりに会うことに。待ち合わせ場所で(あの人なら会いたくないな)と思っていると「緑のジャンパーを着ています」と… 【前回の記事を読む】40年会ってない元カノに会いたくなる男の心理って? 男友達に相談すると「俺なら会わん。何かあるで、それ」…嫌な予感がする待ち合わせ場所である梅田駅前のビルに着いたのは約束時間の15分前だった。一階の書店で10分程雑誌の立ち読みをするが、文字が頭に入ってこない。5分前に指定したエレベーター付近に移動すると何となく彼に似た細見で小柄な男性がリュックを背負って立っていた。ちょっと似…
小説 『心ふたつ[人気連載ピックアップ]』 【第4回】 高田 知明 松茸が採れるふたつの山と東京ドーム三個分くらいの農地を所有する祖父母。帰省すると二人は笑顔で俺と妹を大歓迎 【前回の記事を読む】見かけは昔ながらの一般的な農家のつくり。しかし玄関の板の間の奥にある引き戸の向こうにひろがるのは別世界で…これらの部屋は仕切りの襖を外すと八十畳の大広間となる。ここに来るといつも、日本史の教科書に載っていた大政奉還の二条城の大広間の絵を思い出す。更に廊下側の襖と雨戸を外すと二面から表庭の全景を望む形にすることができる。正面には平らな芝地があるが、ここは昔能舞台が設けられていた…