エッセイ 2022.10.07 【エッセイ】兄は今でも少年のまま...「三月はつらい月」 花と木沓 【第2回】 おのちよ どんなにのろくても、春は必ずやってくる 画家・小野千世の幻の絵日記を書籍化。 先の見えない不安に寄り添う、物静かな北国からの風のたより。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 心に傷を持つ少女・ちよは、修道院で暮らすことに。教室に漂う牧草の香り、修道女たちのせせらぎのようなコーラス、響き渡る鐘の音…神様に見守られながら過ごす日々は、寂しくも温かく、ちよの心をほぐしていく。画家・小野千世の幻の絵日記を書籍化。※本記事は、おのちよ氏の書籍『花と木沓』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。 二月二十七日 今朝別れた、なつかしい母上様 写真を拡大 この大切なお手紙と私とを乘せて、赤い馬橇(そり)は雪の石狩原野を走りつづけました。 写真を拡大 夕日が、その最后の輝きで、雪原をバラ色に染め上げた時、地平線にポツッと〟何か〝が、現われ、だんだんに近づいて、小さな橋になりました。質素な橋は、どこもすっかり白樺の枝や幹で作られていて左右の手摺の枝はPAX・DOMINEと文字のかたちに組まれています。それは、お母さん「主の平安」と云う意味なのです。これが、マリア院の入口でした。 写真を拡大 写真を拡大
エッセイ 『アイアムカタマヒ[注目連載ピックアップ]』 【第5回】 宮武 蘭 人形と変わらない右半身。支えがなければ立つことさえできないリハビリ初日 【前回の記事を読む】車椅子で迎えた転院初日──右半身が動かず始まった過酷なリハビリ【理学療法】大きな空間にストレッチなどを行うベッド、歩行訓練のための平行棒、筋トレを行うような様々な器具、小さな階段、そして大勢のリハビリに励む患者さん達……初日のリハビリは、前半ベッドの上でストレッチ。ベッドに移るのもコツがあり、右半身麻痺の場合ベッドの右側に行き、ベッドに対して斜め45度の角度で車椅子を停車しブ…
小説 『愛と慟哭の果て』 【第2回】 和泉 順 ある男に憑依した宇宙からの脱獄者。恋人や妻と死別する運命を繰り返す彼は、憑依した男の愛人を虜にしてしまい… 【前回の記事を読む】死にかけた男が奇跡の回復…しかしその体に宿っていたのは宇宙からの逃亡者だった鳥飼という体を得たことは大変な幸運だった。フォントスは鳥飼に乗り移った直後に、鳥飼の意識領域を自らの生命エネルギーで包み込んでブロックし、意識下にある記憶領域に降りていった。鳥飼は銀行の支店長という役職の割にはまだ四十八歳と若く、比較的裕福で、しかも単身赴任をしていて自由があり、フォントスが逃亡生活を…