花と木沓

九月二十六日

今日はヤエ子ちゃんのたん生日。

耳の遠いおばさんは彼女に手まり模様の着物を着せます。ガブリエラ様は昨日、バケツ一ぱいのバタァと、バケツ一ぱいのミルクとバケツ一ぱいのタマゴと山盛りのメリケン粉をいっしょくた(・・・・・・)にまぜて、例のダルマさんのような顔をまっかにしてウンウンがん張って巨人の枕ほどのおだんごを捏ねてると思ったら、今日は天使や星や仔山羊型のクッキーが木の葉を敷いた大皿にきつね色にこげていいにおいをふりまいています。

みんなで草の上に輪になって「ハッピーバースデイ ヤエ子」と歌います。

誰かがヤエ子ちゃんの首に野花のレイをかけました。やがて娘達は影踏みをはじめ、そのうち修道女様方もおばさんも加わりました。ヤエ子ちゃんは栗の木の下に取り残され空を見て、おとなしく寝ています。

草の上にたった独りで空を見て寝ている赤いたもとの女の子。私には、それが原っぱに忘れられた市松人形(ふりそで人形)のように見えて仕方がありませんでした。

 

九月二十六日

ゆうべ見た夢

星をまく夢

よいしょ

よいしょと耕して

きらり

きらりと

星をまきました