三月一日
少し熱名の知らない花が
二つ咲いてゆれている
おどりこのようだ
そっとよんでみる
アリサさん
はい
ネリイさん
はい
三月三日
雪解けの
冷めたの水に
うつりゆく影をすくえば
こぼるるよ 指間より
ちらちろと ダイヤの音して
聖堂の赤屋
根若芽やさしき白樺の群れ
流れはて
ついに 残らず
三月四日
ここにも
春が来た。
野も空も
赤クローバーに被われ
ミサのさざ波が流れて
ポプラは指先に 眞綿をからませる。
こんな平安な園ゆえに
小娘は
眞珠の色に胸曇らせて
涙ぐんでも みたくなる。