第一章・再会の秋

次の土曜日、俺は車で高校へ向かった。

久々に行く。懐かしい道のりだ。名古屋市在住の俺は国道一号線を西に向かった。

名古屋市の西に隣接する愛知県海部郡蟹江町。田舎町だ(失礼)。この辺りは高校時代からあまり変わっていない。田園風景が続く。嬉しかった。

当時の高校は田んぼだらけの中に突然出現した建物という感じだった。田んぼの中には、白鷺が普通にいた。名古屋市で生まれ育った俺には、ありえない風景だった。羽を広げたら一mを超える、このような大きな鳥は動物園にでも行かないとなかなか会えなかった。

蟹江警察署前、国道一号線からまっすぐに南へ延びる一本道の通学路を俺たちは通った。この辺りは地盤が低く、台風が来たときには高校のすぐ横を流れる善太川が氾濫し、この一本道は見事に水没した。国道から学校までズボンをひざまでまくって通ったこともある。

校舎のすぐ脇をS字に曲がり、ゆっくりと流れる川の水位は普段で数十㎝しか地面と差異がない。まるで湿地帯の中を流れる川のようだ。

そんな田園風景が、俺は大好きだった。今もその風景は変わっていなかった。

校舎が見えてきた。校舎も全く変わっていない。いや、やはり随分古くなっていた。学校内に入った。既に車が数台止まっていた。皆ラグジャーに着替えて準備をしている。十数名いた。

その中に光先輩がいた。久しぶりだ。この人も変わっていない。一つ上の先輩だが、俺たちが入学したときには既に上級生の三年生でも誰も敵わなかった。……であろう人物だ。もの申せるのはラグビー部の一部の先輩たちぐらいだ。番長だった。そう、昔ながらの番長という表現がふさわしいだろう。

後輩思いで、半端な上級生や先生には厳しい人だった。こんな人は、後にも先にも、いやしない。本当に強い男とは寡黙でやさしいものだと俺たちはこの人から教わった。卒業後もよく飲みに連れて行ってもらったものだ。

背が高く、大きく、そして強い。不動のナンバーエイト。決して倒れないイメージがあった。

「相木か? 全然変わってないなお前」

「光先輩こそ。全然、変わっていませんね」

「ああ。この方々たちも変わっていないぞ」