この時代はバブル崩壊後の大不況で若者の就職難がとても深刻でした。就職氷河期で大卒の求人倍率は2000年には、0・9倍までおちこみ、その後もどんどん悪化していきました。世界中が不況で金融不安が起こり、若者の就職難がとても深刻になっていきます。
介護保険の成立によって多くの若者が、介護関係の施設に就職できることになり、世界の失業問題を尻目に日本の若者の雇用は安定していきました。この意味でもこの法律はとても日本に良い効果をもたらしたと思います。
少子化が進んでいる今は介護者の採用難が問題になり、介護関係の求人はとても困難になっています。
要介護者の立場の歴史的変化
江戸時代には有名な姨捨山(うばすてやま)の話があります。凶作になると餓死する人もあった時代、老人を捨てるというのは仕方のない選択だったかもしれません。
現代になっても高齢で病気になって動けなくなった高齢者を農家の大家族が、仕事の合間に介護するという形が多くみられました。年金制度もなく、高齢者は貧しさの中、どうしてもおろそかに扱われてきました。
しかし戦後の高度成長によって農業から工業への転換が起こりました。これと共に人々は農村から、都会へと移り住むようになりました。大家族から核家族へと急激に変わっていきました。年金制度が整えられ、生活保護制度も充実されて、高齢者が経済的に家族に依存しなくても生活ができるようになりました。
こうして高齢者は経済的独立を勝ち取っていきました。介護保険制度によって家族の世話にならないでも何とかなるという新しい時代が来たのです。
家族が介護しなくても、ケアマネージャーに必要な施設を見つけてもらい、介護を受けることができるようになっています。一人暮らしの人が、在宅で介護ヘルパーに世話になりながら、施設に入らずにデイケアに通い、リハビリに励むことができるようになっています。かなり重症の方もこの形で在宅しながら介護を受けて生活を送っておられます。
その意味でもこの制度は世界に誇るすごい制度です。さらに特別養護老人ホームや介護老人保健施設、私設の老人ホームなどが次々と開設されてきました。