ケンのヘルメットに付けられているカメラの映像が火星基地に届く。衛星を経由して地球基地にも配信されていく。
撮影から4分後に映像が地球でも映し出されて、地球本部もこれはもはや冗談どころではない。火星人か、いや太陽系外の宇宙人かと意見が続出、思い思いの想像に混乱する中、本部内の全員が、火星での大発見を一目見ようと管制室に集まり、身動きがとれない状況になってしまった。
管制センターの通信長より「オイ、落ち着け、落ち着け」と指示が出るが、何を落ち着くのか意味がわからない。頭の中はパニック状態である。
探検隊から次々と届く映像に、管制センターの中では「火星基地の隊員がフェイクニュースを流しているのではないの」と、いまだに疑うものさえいる。
そのような中、管制センターの職員が興奮のあまりSNSに火星人発見と流してしまった。
瞬く間に6万件を超えるヒットが来る。次々と広がり、わずか数時間で30万件を超えた。あまりに急速に広がる情報にむしろ真実味が薄れていく。このSNSを見た人は誰もがフェイクとしか思っていない。
そんな広がりの中、報道機関が真実かどうかの裏を取りに来た。
「こちらはNK放送局です。今SNSで火星人発見で炎上していますがどうなっているのでしょうか」
「当然嘘に決まっていると思いますが、おたくの職員からの情報ですので裏を取らせてもらいます」
管制センターの広報官は「ウソではありません事実です」と興奮気味に伝える。
「日本の火星探査隊が火星人を発見したのです。今状況を確認していますがフェイクではありません」
「正式に記者会見を開く準備をしていますから、それまでは報道を控えていただけませんか」
報道機関各社にも動揺が起きる。もはや正式な記者会見など待ってはいられない、世紀の大発見である。「フェイクではない、フェイクではない、世紀の大発見、日本探検隊が火星人と遭遇」の字幕が画面に踊る。
世界中に次々と臨時ニュースが流れる。
第1報「火星人発見」
第2報「火星人の基地発見」
第3報「火星人の遺跡発見」
第4報「巨大施設と火星人と思われるミイラ発見」
新聞各社の号外が駅前で配られる。
朝の6時には宇宙センターの周りには300人を超える報道陣が集まり、玄関前は黒山の人だかりである。テレビ各社は全ての番組を打ち切って臨時ニュースを流し続ける。
この事態に急遽7時から記者会見が行われることになったが、何をどのように発表するか何も決まっていない。送られてきた映像だけを流すことになった。