【前回の記事を読む】ウイルスには「細胞がない」どのように活動し、増殖するのか?
1 微生物の世界
(4)生物の誕生
モスクワ大学の生化学者オパーリンは、1935年に[生命の起源]の著書で「生命は原始の海で簡単な有機物質が生じ、これが高分子化合物のコアセルベートとなり、長い年月をかけて生命体に進化した」という説を提言しました。
1953年にミラーは、オパーリンの説を実験で試してみようと、フラスコ内にメタン、アンモニア、水素、水蒸気の原始大気と同じ成分のガスを入れ、雷に似せた放電によってアミノ酸を生成しました。さらにタンパク質に類似の有機物の生成まで成功して、地球創成期の原始大気中で生命体が生まれたという説を発表しています。
地球は約46億年前に誕生しましたが、発見された最古の化石は、約36億年前の細菌らしいものなので、地球に生命体が生まれたのがこのあたりの地質時代だろうと思われます。約30億年前の地層からは、原始海水中に生息したとみられる藻類の化石コレニアが発見されています。最初の生命体は、原始海水中に生じた有機物から簡単な細菌のような単細胞生物が誕生し、悠久の時を経て次第に進化して現在のような多種多様な生物界になったと考えられています。
(5)細胞小器官の機能
動物細胞の細胞膜には、養分やホルモン、抗原などの外から細胞に作用するものを感知して、細胞に必要なものを取り込む機能をもつ突起状の受容体(レセプター)があります。後に述べるように、ウイルスはこの細胞の受容体を利用し細胞内に侵入するのです。
細胞内では、核やミトコンドリア、リボゾーム、ゴルジ体、リソソームなどの様々な細胞小器官が連携して物質代謝とエネルギー代謝をして生命活動や増殖をおこないます。ミトコンドリアは、外膜と内膜に囲まれたやや大型の楕円形をしており、内膜は多くのひだがある構造になっています。核のDNAとは別に環状のミトコンドリアDNAをもち自己増殖して細胞内で増えるので、太古の生命体の創成期に、ミトコンドリアの祖先の好気性細菌が細胞内に入って共生するようになったものと考えられています。
このミトコンドリアは、主にエネルギー代謝の役割をするATP(アデノシン三リン酸)をつくって貯え、必要に応じて供給する役目をもち細胞のエネルギーをまかなう重要なはたらきをしています。リボゾームは、小胞体の面に多数点在する小粒子ですが、タンパク質を合成する重要な役割を担っています。